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【社会】

声をきいて 子どもの明日(下) 子育て 孤立する母子

文京シビックセンターで開かれた生後3カ月までの赤ちゃんと親の交流イベント=東京都文京区で

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 東京都世田谷区のマンションで、阿部直子さん(34)はゼロ歳の次女の夜泣きで目を覚ました。一歳の長女も「ママー、ママー」とぐずりだす。すると隣に住む男性から壁越しに「うるせー」と怒鳴られた。涙があふれてきた。「連日の寝不足に情けなさが重なって…」

 誰かに助けを求めたい。文京区で同じくゼロ歳の長男を育てる福田純子さん(36)も、そんな衝動を味わってきた。母乳を与え、おむつを替えても泣きやまない長男に、どうしてよいか分からなくなる。日中は母子二人きり。「子どもはかわいいけど、こんなに大変とは知らなかった」

 孤立した子育ては、虐待の引き金になりうる。国の調査によると、子どもが虐待で死亡した家庭の七割は、近所付き合いがほとんどなかった。東京での子育ては条件がより厳しい。三世代同居の割合は全国最低の2・2%。勤労者の平均帰宅時間は最も遅い午後七時四十五分。親にも夫にも頼りにくい。都監察医務院の統計では、二〇一四年までの十年間に東京二十三区で六十三人の妊産婦が産後うつなどで自殺している。

 追い込まれる母子を支えようと、「ネウボラ」と呼ばれる試みが官民で始まっている。フィンランド語で「助言の場」という意味。妊娠中から子育て期まで、保健師らが継続して相談に乗る仕組みだ。導入する文京区では、生後間もない子どもと母親が家庭に引きこもらないよう、母子同士が交流できる場も設けた。

 ◇ 

 親が気持ちをはき出せる場を持つのと同時に、親自身にも子どもの気持ちに寄り添ってもらい、虐待を防ごうとする取り組みも広がる。

 育児情報誌編集長の高祖常子(こうそときこ)さん(56)は保護者向けに各地で講座を開く。強調するのは、子どもの立場で考えることだ。

 例えば、子ども同士がおもちゃを取り合う時、親は「貸してあげなさい」と叱りがちだが、高祖さんは「その時、子どもはどんな気持ちでしょうか」と受講者に問い掛ける。すると「僕はこれで遊びたいのに」「ママは私の味方じゃないの?」と子ども目線の声が上がり始める。

 「親が子どもの気持ちに気づき、受け止めることで、子どもが落ち着き、親自身のストレスも軽減されていく」。高祖さんはそんな「良い循環」に期待をかける。「社会が親のつらさを理解して支え、親も子どもの気持ちを受け止める。そこから、子どもを守れる社会が始まる」 (柏崎智子、小林由比、奥野斐が担当しました)

 

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