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【社会】

浅草寺を守るチタン瓦 五重塔に採用

浅草寺本堂のチタン瓦屋根。五重塔の屋根のふき替えにも同じ瓦が使われる(カナメ提供)

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 東京・浅草の浅草寺で行われている五重塔(高さ五三・三二メートル)の屋根のふき替え工事に、宇都宮市の金属屋根メーカーが手掛けた軽量で耐久性に優れるチタン製の瓦が採用された。宝蔵(ほうぞう)門、本堂にも同じチタン瓦が導入済みで、東日本大震災で一枚も落ちなかったという優れもの。このチタン瓦は浅草寺が採用第一号となって以来、全国約百カ所の寺社に広がっている。 (藤原哲也)

 「安全面と精巧な造りから、景観性を重視して今回も採用を決めた。震災でびくともしなかったので信頼もあるし、チタン瓦への抵抗はない」。浅草寺の清水谷尚順(しみずたにしょうじゅん)庶務部長(43)はそう話す。

 このチタン瓦を生み出したのは、宇都宮市の「カナメ」。同社によると、チタン瓦は酸性雨や潮風に強く、軽さは一般的な粘土瓦と比べて十三分の一程度のため、古い建物が多い寺社建築の耐震性向上にうってつけという。

 金属素材のチタンは航空機や自動車、人工骨にも実用化されているが、硬いため、加工が難しいという難点がある。カナメのチタン瓦は、一九八〇年代から手作り品として存在していたが、広く普及するには至らなかった。

 瓦の大量生産には、機械でのプレス加工が必須。この工程を複数回に増やし、素材メーカーの協力で軟らかい素材も導入した。開発はカナメのグループ会社が中心となり、二〇〇五年に薄さ〇・三ミリのチタン瓦が完成した。

 全国の寺社にダイレクトメールを送って営業を始めた直後、最初に相談を受けて受注したのが浅草寺だった。「第一号案件が浅草寺になったことで、注目されてうれしかった」とカナメの吉原正博社長(42)。〇七年に宝蔵門、一〇年に本堂が改修を終えた際、チタン瓦を中心に計約十三万枚の屋根材が使われた。

工事のため囲いに覆われた浅草寺五重塔。奥は本堂=12日、東京都台東区で(本社ヘリ「まなづる」から)

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 現在工事が進む五重塔では、塔が再建された一九七三年に使われたアルミ合金瓦を取り外し、チタン瓦など約五万七千枚の屋根材を使用。ふき替えは昨年十月に始まり、今春に終わる見込みだ。

 同社のチタン瓦は一般の瓦よりも割高だが、浅草寺の他にも、東京都大田区の大林寺、神奈川県鎌倉市の長谷寺、栃木県足利市の華厳(けごん)寺などで採用されている。最近は、寺社建築の多い西日本からも問い合わせが増えているという。

 吉原社長は「屋根瓦特有の『色むら』も忠実に再現しており、他と違う自負がある。地域の心のよりどころとなる建物を後世に残すお手伝いをし続けたい」と話している。

<カナメ> 1941年に福島県喜多方市で「渡部要板金工業」として創業。75年に社名変更し、83年に宇都宮市に本社を移転。金属屋根のほか太陽光発電関連製品の販売なども手掛ける。喜多方市と栃木県大田原市に工場がある。従業員145人で、2015年の売り上げは約60億円。

 

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