東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

同性愛男性、遺族給付を申請 パートナー殺され「夫婦同然だった」

写真

 名古屋市で二〇一四年に同性愛のパートナーを殺害されたとして、被害者と同居していた清掃作業員の男性(41)=同市=が、犯罪被害者遺族を対象とした国の給付金の支給を愛知県公安委員会に申請したことが分かった。男性の弁護団によると、同性愛者が配偶者として遺族給付金の申請をしたのは全国初とみられる。 (杉藤貴浩)

 申請は先月十二日付。男性作業員は本紙の取材に「夫婦同然の生活だった。国は給付を認定してほしい」と主張している。

 事件は一四年十二月、作業員が被害者の無職男性=当時(52)=と暮らしていた名古屋市の自宅で発生。作業員と一時交際していた受刑者(43)が、被害者の胸を包丁で刺して殺害した。名古屋地裁は「受刑者が男性を独り占めしたいと考え、夫婦同然の関係にあった被害者を刺殺した」と指摘、殺人罪などで懲役十四年の判決を言い渡し、確定した。

 作業員の代理人弁護士によると、この男性は被害者と二十年余り同居し、給料を被害者の口座に入金。家事や家計管理は被害者が担うなど生活は一体だった。事件のショックで自宅に住めなくなるなど精神的、経済的に大きな損失を受けたという。国の犯罪被害給付制度は、遺族の対象を婚姻関係にある配偶者のほか、内縁関係の相手も含めている。代理人弁護士は「今回のケースは同性同士でも事実上の内縁関係であり、給付の条件に当てはまる」と主張している。

 制度を担当する警察庁は、今回の申請を「個別の事案については答えられない」とする一方、「同性愛の同居者は制度上の遺族、配偶者には入らず、事実上の婚姻関係にあったとも認められないと考えられる」と説明している。

◆刑事分野、取り組み遅れる

 殺人事件の被害者と同性カップルの関係にあった男性が「配偶者」として遺族給付金の申請をしたことに、当事者団体や専門家は「国は時代の流れに即した対応を」と訴える。

 性同一性障害などを含めたLGBT(性的少数者)の権利を巡っては、東京都渋谷区で二〇一五年三月、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行する条例が成立。社会的な理解が広がりつつある一方、刑事司法分野の取り組みに遅れを指摘する声も上がる。

 性的少数者のための法整備を求める「LGBT法連合会」(東京)によると、受刑者に同性パートナーが面会を求めたところ、法律上の夫婦や親族でないことを理由に「更生につながらない」として拒否された事例もあるという。神谷悠一事務局長は今回の申請を「当事者が声を上げるのは大きい。行政は柔軟な対応を」と期待を込める。

 犯罪被害者支援に詳しい諸沢英道・元常磐大学長は「欧米では法的な家族関係にしばられず、共同生活の実態を重視して給付するのが一般的。国内の制度運用も時代の流れを考慮すべき時期にきている」と話した。

<犯罪被害給付制度> 犯罪で亡くなった被害者の遺族や負傷した被害者本人を支援するため、国が一時金を支給する制度。申請者が犯罪を知った時から2年以内か、犯罪の発生から7年以内に申請する必要がある。各都道府県の公安委員会が支給の可否や額を決める。遺族給付金の場合、死亡者の配偶者(内縁関係含む)と子、父母、孫、祖父母、きょうだいが対象。年齢や収入、遺族との関係などによって320万〜2964万円が支払われる。2015年度の申請は256件で、支給決定は242件(過年度申請分含む)。平均給付額は510万円。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報



ピックアップ
Recommended by