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【社会】

警察庁、GPS捜査隠す通達 06年に取り調べ書類残さぬ指示

 捜査対象者の車などに衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付けて尾行する捜査を巡り、警察庁が二〇〇六年六月に都道府県警に出した通達で、端末使用について取り調べの中で容疑者らに明らかにしないなど秘密の保持を指示していたことが、警察当局への取材で分かった。捜査書類の作成に当たっても、記載しないよう徹底を求めていた。

 通達は、GPS捜査のマニュアルである「移動追跡装置運用要領」の運用について説明。「保秘の徹底」として、取り調べで明らかにしないほか、捜査書類の作成においても「移動追跡装置の存在を推知させるような記載をしない」と求めた。

 都道府県警が報道機関に容疑者逮捕を発表する際なども「移動追跡装置を使用した捜査を実施したことを公にしない」と明記していた。

 警察庁は、こうした通達を出した理由について「具体的な捜査手段を推測されると、対抗手段を講じられかねないため」と説明している。

 警察庁の運用要領は、裁判所の令状が必要ないGPS端末の設置について、犯罪の疑いや危険性が高いため速やかな摘発が求められ、ほかの手段で追跡が困難な場合の任意捜査において可能と規定。具体例として「略取誘拐」や「連続発生の強盗、窃盗」「暴力団関連犯罪」などを挙げている。

◆秘密化、到底許されぬ

 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)の話 証拠を集める過程をまったくの秘密にすることは、事後に裁判所による適法・違法の判断を不可能にするもので、到底許されない。GPSによる捜査をいわば「裏の捜査」として隠し、それによって得た情報を基に、取り調べや捜索、差し押さえなど「表の捜査」を行おうとしている。それでは自由やプライバシーが保護される市民社会ではなく、警察監視国家をつくり出してしまう。GPS捜査に令状が必要かどうかはケース・バイ・ケースだが、法律を踏まえて運用基準を確立すべきだ。

◆令状なしの違法性 判断分かれる

 GPS端末を使った犯罪捜査を巡っては、裁判所の令状なく実施した場合の違法性が各地の裁判所で争われ、判断が分かれている。最高裁は今春にも、統一判断を示す見通しだ。

 福井地裁は昨年十二月、「尾行の補助的手段として使用しており、令状が必要な強制捜査には当たらない」として適法との判決を出した。福井県警が捜査資料にGPS端末を使ったと明記しなかった点については「事後の検証を困難にするため遺憾」と批判した。

 一方、東京地裁立川支部は昨年十二月、車を盗んだとして窃盗罪に問われた男二人の公判で「GPS捜査はプライバシーを大きく侵害し、令状が必要な強制処分」と判断し、令状なくGPS端末を車に取り付けた捜査について違法と示した。しかし「証拠能力は否定されない」とし、証拠採用そのものは認めた。

 高裁レベルでも、名古屋高裁が昨年六月に令状なしの捜査を違法としたのに対し、広島高裁は昨年七月に令状は不要とするなど、判断が分かれている。

 こうした中、千葉県警は昨年、全国で初めて令状を取り、捜査対象者の車にGPS端末を設置。その後、警察庁幹部は「違法な証拠収集と言われないよう、念には念を入れて令状を取った」と説明した。

<GPS捜査> 警察庁は2006年、人工衛星を利用して正確な位置情報を特定できるGPSを使った捜査に関する通達を出した。「犯罪の嫌疑や危険性の高さから速やかな摘発が求められ、他の捜査での追跡が困難」な場合に利用できるとされるが、具体的な運用基準は明らかになっていない。総務省は15年6月、通信事業者の個人情報保護に関する指針を改正し、携帯電話の位置情報について、裁判所の令状があれば利用者に知らせないまま捜査機関に提供できるようにしている。

 

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