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【社会】

沖縄・高江ルポ 増え始めた轟音 「怖い」去る家族

米軍北部訓練場に着陸する米軍ヘリコプター=2日=1日、沖縄県東村高江で

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 「今日も朝から二機が追いかけっこするみたいに飛んでる。墜落の後だっておかまいなしさ」−。沖縄県東村(ひがしそん)高江では最近、オスプレイを含む米軍ヘリコプターの訓練が再び増え始めた。周辺の新設離着陸帯(ヘリパッド)はほぼ完成。資材搬入の工事車両をゲート前で食い止めようとした反対派市民の座り込みも、彼らを力ずくで強制排除した機動隊の姿も今はない。早咲き桜は満開だが、住民たちは「いつ落ちてくるかと怖い」と顔をしかめた。(辻渕智之)

 オスプレイが飛ぶと、轟音(ごうおん)とともに、家の窓ガラスや床が揺れる。住民の清水亜生(あき)さん(37)は恐怖で思わず、もうすぐ一歳の循太(かんた)君を抱きしめる。「うるさいと昼寝せず、おっぱいをあげても泣きやまない」

 生徒数三人の高江中学校は三月で廃校になる。小学校も児童は十人。「オスプレイのせいで、小学校までなくならないか」と心配だ。現に三人の子どものいる家族は今春、米軍機の騒音を苦に高江を去る。

 ヘリパッドは、自民党の沖縄担当相が大差で敗れた昨夏の参院選翌日、国が工事を再開した。ゲート前には連日、県内外から数百人の市民が駆け付け、路上に座り込んだ。

 「ヘリの騒音はもちろん嫌。でも騒ぎが終わり、ほっとした面もある」。自治会の高江区の仲嶺(なかみね)久美子区長(66)は話す。反対派は一時、周辺の道路をふさいで「検問」し、住民の車も巻き込まれた。

 今も那覇市から抗議に通う女性(36)は「住民のための反対運動だから、住民に迷惑をかけちゃだめ。でも、なら、どうすれば工事を止められたのか」と振り返る。ネットなどで「道が封鎖され救急車が通れなかった」との情報も流れたが、地元消防は「そんな事例はなかった」と否定する。

 区は過去二回、建設反対を決議した。一方で、国から村に出ている特定防衛施設周辺整備調整交付金が二千万円増額され、区に割り当てられることになった。昨年十一月、交付金の受け入れを決め、仲嶺区長は菅義偉(すがよしひで)官房長官に三回会った。県内外の反対派からは抗議の電話やファクスが相次いだ。

 「飛行ルートの変更や夜間訓練の中止を求めている。聞く耳を国にもってもらう。その道を閉ざしたくないから」と仲嶺区長。区民の集まりでは、ヘリパッドの話はみんな避けるという。「小さな集落の中でギスギスしたくないから。半分あきらめもある」

 住民も、抗議する市民も、建設や訓練に反対している点は変わらない。だが、それぞれの立場ならではの行動や考え方の違いを、一部のメディアは対立や分断として伝える。

 「日本全体で多くの人が苦しい生活を送っているから、『自分は耐えているのに何だ』と、物言う人や抵抗する沖縄がねたまれる。くやしい」。ヘリパッド抗議で隣村からゲート前に通う農家の儀保(ぎぼ)昇さん(62)は言う。「中島みゆきの、あの歌を思い出しますよ。『闘う君の唄(うた)を 闘わない奴等(やつら)が笑うだろう…』ってあるでしょ」

 

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