東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<「沖縄ヘイト」言説を問う>(5) 慶応大教授・鈴木秀美さん(57)

写真

 放送の政治的公平とは、ほっておいても広がる政府の意向と、それに反対する人の声を単純に同じように扱うことではない。少数派の意見こそ取り上げるのが本来メディアの役割だ。沖縄への差別意識や言説に対抗していくには、沖縄で起きていることを全国にきちんと伝えていくことがメディアに求められている。

 東京MXテレビの番組「ニュース女子」の問題は、これまでテレビ業界の中で起きてきた問題とは、性質が違う。これまでにも番組の中で、個々の出演者が差別的な発言をして問題視されたこともあったかもしれない。しかし、番組のひとつのコーナーそのものの意図がヘイトではないかと批判を浴び、社会問題になったことは過去になかったのではないか。

 裏付けのない情報がインターネットに書き込まれたり、動画が投稿されたりしている。週刊誌などが「嫌中・嫌韓」特集を組むことなどもあり、ネットの世界で行われていたことは、活字の世界にまで広がっていた。これが、公共性の高い放送の世界にまで及ぶことは許すことはできない。沖縄に対する差別意識や差別的言動を放送を使って流すことを放送局が止められなかったことがとても残念だ。

 放送法が規定する番組編集のルールは倫理規定であり、私は総務大臣が番組の内容に口出しすることには反対だ。だが、あくまで倫理とはいえ、放送局として報道は事実を曲げないという規定があるのだから、裏付けを取らずに間違ったことを流すのは倫理違反だ。番組制作にかかわるすべての人は、放送倫理が何のためにあり、それを守っていくことが番組をつくるプロに求められているということを認識すべきだ。

 放送に限らず、日本には表現規制が過剰になった時の歯止めがない。だから、刑事罰を科しての法的規制はしないほうがいい。ただ、放送、ネット、街頭でヘイト的な言説が飛び出す現状は深刻。教育の場で子どもたちに考えさせることや、地方公共団体が対策を工夫する必要がある。

 そして、最も効果があるのはメディアが怒ることではないか。事実と問題点を示し、「差別はいけない」というメッセージを強く社会に出していくことをコツコツやっていくしかない。今回の問題について、特に放送局には、考える場をつくったり、検証番組をつくったりしてほしい。

 <すずき・ひでみ> 1959年生まれ。慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授。専門は、憲法・メディア法。著書に「放送の自由」、共著に「放送制度概論」など。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by