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【社会】

<「沖縄ヘイト」言説を問う>(6) 東大大学院教授・高橋哲哉さん(60)

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 沖縄に対するヘイトスピーチにはふたつの側面がある。ひとつは在日韓国・朝鮮人らに対するのと同じマイノリティーへの差別。もうひとつは基地反対運動への政治的攻撃だ。

 もともと独立国だった沖縄は、明治初期に日本に併合された。異民族という点では在日韓国・朝鮮人と同じで、さまざまな差別にあってきた。そうした歴史的な差別を克服できていない。

 一方で、一九九五年の米兵による少女暴行事件以降、米軍普天間飛行場の辺野古移設計画が持ち上がり、基地反対運動が持続的に行われるようになると、次第に本土では反発が起きてくる。粘り強い反対運動に業を煮やした安倍政権は、沖縄の民意を無視して辺野古新基地をつくろうとしているが、沖縄は県を挙げて抵抗している。これを快く思わない人に、国策にいつまでも抵抗する者は厄介者、非国民だという意識が生まれ、沖縄ヘイトにつながっている。

 もうひとつ大事なのは、沖縄ヘイトに対して眉をひそめている本土の人にも、沖縄に対する加害責任があるということ。有権者の99%を占める本土の人間が日米安保体制を支持し、その負担とリスクを沖縄に押しつけている。その構造自体が差別だ。

 フェイクニュース(虚偽情報で作られたニュース)やヘイトスピーチがまん延する状況は深刻だ。トランプ現象を生んだ米国もそうだし、欧州でも極右が台頭して排外的な考えが広がっている。

 国内では、東西の大都市の首長が乱暴な発言をして、批判されても、「本音では、みな感じているんじゃないか」と居直ることもあった。ネット上では、かつては表だって言えなかった差別的考えが発信されるようになり、ついに放送にまで登場してしまった。

 ネット上にあふれる偽情報には、自分を肯定してくれる、都合のいい情報がある。そうした情報に進んでだまされてしまう人がいる。でも、事実はあくまで事実。情報の真偽を見分ける力を身に付けなくてはいけない。

 人権、平等は建前で自分第一、自国第一という社会になってきている。強者が弱者を踏みつぶすような流れに抗して、人には尊厳があり、互いに対等な存在として尊重し合わなければならないという考えを、鍛え直さなければならない。 =おわり

 <たかはし・てつや> 1956年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は哲学。著作に「沖縄の米軍基地 『県外移設』を考える」「犠牲のシステム 福島・沖縄」など。

 

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