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【社会】

雪崩で高校生ら8人死亡 注意報発令の中で山岳訓練

消防隊員らに付き添われ、スキー場から下山する高校生ら=27日午後6時44分、栃木県那須町で(平野皓士朗撮影)

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 二十七日午前八時半ごろ、栃木県那須町湯本のスキー場「那須温泉ファミリースキー場」付近で雪崩が発生し、積雪をかき分けながら歩く「ラッセル」の訓練をしていた高校生らが巻き込まれた。県警によると、県立大田原高山岳部の男子生徒七人と顧問の男性教員一人が死亡。この八人以外の負傷者は四十人で、うち重傷者を七人としている。

 那須町付近は二十七日朝から雪が多く降り、雪崩注意報などが継続していた。専門家は表層雪崩の可能性を指摘している。県警は、こうした悪天候の中で訓練をなぜ実施したのか、業務上過失致死傷容疑で捜査している。県警によると、死亡したのは、顧問の毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん(29)=同県大田原市=や、生徒の鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん(17)=那須町=ら。死因は圧死だった。

 県教育委員会によると、県高校体育連盟が二十五日から二泊三日の日程で開いた「春山安全登山講習会」に、大田原高など七校の計六十二人が参加。生徒四十人と教員八人が訓練中に雪崩が発生した。残る十四人はこの訓練に加わっていなかった。午前九時二十分に一一〇番があった。

 県警や消防によると、訓練はロッジから数百メートルの第二ゲレンデ上部付近で実施し、目測によると雪崩の規模は約百〜二百メートルとみられる。

 県教委によると、この日は当初、登山をする予定だったが、雪が多く降ったことから、午前六時ごろ、県高体連登山部の責任者を務める大田原高の教員が中止を決定。代わりに、生徒らは五グループに分かれてラッセル訓練をし、大田原高のグループが先頭だった。

 大田原高山岳部は、全国大会に連続出場する強豪。大田原高以外に講習会に参加していたのは、県立の那須清峰高、矢板東高、真岡(もおか)女子高、真岡高、宇都宮高と私立の矢板中央高。全体の人数は生徒五十一人と教員十一人。大田原高は生徒十二人と教員二人だった。

 歩行可能な生徒らは午後零時半すぎから下山を開始。県警や消防などは、夜までに負傷者の搬送を終えた。県からの派遣要請を受け、自衛隊も救助活動に当たった。

 那須温泉ファミリースキー場は二十日に今冬の営業を終了。気象庁によると、那須町では二十七日午前一時現在に〇センチだった積雪が、午前九時現在で三三センチを観測していた。

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◆高1生徒「気付くと胸まで雪」

 雪の塊を乗り越える訓練をしていた時だった。「雪崩だ」と誰かの叫び声。気が付くと、胸まで雪が来ていた。雪崩に巻き込まれた高校一年の男子生徒(16)が搬送先の病院で取材に応じ、憔悴(しょうすい)しきった様子で記憶をたどった。

 二十七日は二泊三日の講習会の最終日。午前五時に起床した。未明からの大雪で、六時ごろに茶臼岳への登山が中止されることが決まった。七時半ごろ、登山の代わりに、隊列を組んで積雪の中を進むラッセルと呼ばれる冬山技術の訓練をすることに決定。生徒四十人と教員八人が、ゲレンデ下部にあるロッジを出発した。

 一五度から二〇度、二五度。どんどん斜度を増していくゲレンデを列になって進んだ。四百〜五百メートル登ったところで、グループに分かれて雪の塊を乗り越える訓練になった。

 男子生徒によると、雪崩の瞬間のことは「怖過ぎて記憶が飛んだ」という。「冷たかった。顔が出ていて助かったと思った」。何とかはい出ることができ、同じように胸まで埋まっている人や、全身が雪に埋まっている人を助け出したという。自身にけがはなかった。

 県警によると、午前八時半ごろ、雪の斜面が百〜二百メートルの範囲で崩れ落ちたとみられ、いくつかのグループに分かれていた高校生らを巻き込んだ。「三〇度ぐらいある」(地元のホテル関係者)という急斜面。柔らかい春の新雪に、身動きは取りづらかったはずだ。

 十時五分ごろ、救助隊の第一陣がロッジに着いたが、腰まで沈み込む雪にてこずり、現場に到着したのは十一時五十五分ごろ。雪の下から聞こえるうめき声を手掛かりに、埋まっている生徒らをスコップで掘り出していった。助け出された生徒らはぐったりし、無言で座り込んでしまう子も。隊員たちが防寒シートで包み込み、体温を奪われないようにしたという。

◆亡くなられた方々

【大田原高校生徒】高瀬淳生(あつき)さん(16)=矢板市▽浅井譲さん(17)=那須塩原市▽大金(おおがね)実さん(17)=同▽奥公輝(まさき)さん(16)=さくら市▽萩原秀知(ひでとも)さん(16)=高根沢町▽鏑木(かぶらぎ)悠輔さん(17)=那須町▽佐藤宏祐(こうすけ)さん(16)=大田原市 

【同教員】毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん(29)=同

 (いずれも栃木県在住)

 

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