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【社会】

日本で演じる心の葛藤 「日比国際児」フィリピンに数万人

来日して劇を披露する子どもたち=マニラで(今川さん提供)

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 日本人男性とフィリピン人女性との間に生まれ、父親を知らないままフィリピンで暮らす子どもたちが今月来日し、関東地方など各地で演劇を披露している。劇を通して、心の葛藤を伝えるためだ。この来日公演はほぼ毎年5月に行っており、今年で20年目を迎える。最大の目的は父親捜し。「会いたい」と願いながら各地を訪れている。 (浅野有紀)

 マニラで女性の自立を支援する非政府組織(NGO)「ドーン」などによると、二〇〇四年ごろまで、興行ビザで多くのフィリピン人女性が来日。ホステスとして働く店で出会った男性客との間に子どもを授かっても、男性に家庭があると認知を受けられず、おなかの子とやむなく帰国する。

 こうして生まれた子どもは、ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(JFC=日比国際児)と呼ばれる。JFCネットワーク(東京)によると、その数はマニラ一帯で一万人、フィリピン全土では数万人とみられる。成長するにつれ、周りの子と肌の色や名前が違うことに気付く。出自を知るため、「父親に会いたい」との思いを抱く子も。

 そんな胸の内を舞台で表現してもらおうと、ドーンが一九九八年に「劇団あけぼの」を設立。JFCが所属する。演目は「クレイン・ドッグ〜ルーツを探して〜」。主人公の翼の生えた犬が、父親の鶴を捜して旅に出る物語で、自身もJFCの劇作家ミチコ・ヤマモトさんが描いた。

 日本での公演は、東日本大震災のあった一一年を除き、毎年続けている。今年は五人が十三日に来日し、十四日の愛知県春日井市を皮切りに、活動の支援者がいる京都大、関西大、埼玉大、千葉大、神田外語大などを巡り、公演する。

 公演の合間に、子どもたちが心待ちにしているのは父親との面会の時間。協力する、さいたま市のNPO「みんなの夢の音楽隊」代表今川夏如(なつゆき)さん(38)は、延べ三十人の父親との面会に立ち会ってきた。「学校でいじめられたり、父親に捨てられたと考えたり、自信を持てない子が多い。そんな子が目を輝かせてお父さんに成績表を見せ、『こんなに頑張っているよ』とうれしそうに笑うんです」

 約束の時間に父親が現れないこともあり、子どもにはぎりぎりまで内緒にしておくという。一方で、日本の家族に内緒で学費を工面したり、仕送りしたりする父親もいる。

 日本人男性のモラルが問われるJFCの存在。今川さんは「根底には、出稼ぎに頼らざるを得ないフィリピンの貧困がある。興行ビザを安易に発行してきた日本の責任も重い」と指摘する。

 ◆関東での公演は、22日午後5時半から埼玉大工学部シアター教室(さいたま市桜区下大久保)、24日午後0時10分から千葉大総合学生支援センター(千葉市稲毛区弥生町)、25日午後4時から川崎市ふれあい館(川崎市川崎区桜本1)、27日午前11時から神田外語大ミレニアムハウス(千葉市美浜区若葉1)である。

 

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