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【社会】

「共謀罪と共通点」警職法 59年前に横暴を阻んだ市民運動

警職法改正案の問題点を指摘した「週刊明星」

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 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が十九日、衆院法務委員会で可決された。五十九年前、衆院に提出された警察官職務執行法(警職法)改正案を廃案に追い込む運動に参加した人たちには、法案成立を急ぐ安倍政権の姿が、警察の取り締まり強化をもくろんだ当時の政府と重なって映る。 (中野祐紀)

 当時、警職法改正案の問題点を端的に突いたのは、一九五八(昭和三十三)年十一月九日号の「週刊明星」の記事だった。警職法に「おまわりさんのしごとのやりかた」と読み仮名を振り、五ページにわたる分かりやすい文章で危険性を説き、反対運動に火を付けた。

 「デートもうっかりできず、新婚旅行に出かけても、いつガラリと襖(ふすま)をあけて警官が踏みこむかもしれない」。当時名古屋大法学部一年だった元駐中国大使の丹羽宇一郎さん(78)は、記事が出たころに運動に加わった。戦中の三九年生まれ。改正案の中身は、市民の思想や言論を弾圧した戦前・戦中の治安維持法と「オイコラ警官」の再来にしか思えなかったという。

 「僕もデートは好きだったし…というのは冗談だけど、市民に『人ごとじゃない』と分からせる名コピーだったな」。街頭で拡声器を握り、反対を叫んだ。市民のデモと野党の徹底抗戦を受け、政府は十一月に改正を断念。改正案は「審議未了」で廃案になった。

 あれから六十年近くが過ぎた。集団的自衛権の行使を可能とし、次は共謀罪法案の成立を目指す安倍政権。丹羽さんにはその姿が、六〇年の日米安保条約改定を目前にして警察の権限を拡大しようとした、安倍首相の祖父の故・岸信介元首相の政権と二重写しになるという。

「共謀罪」について話す元駐中国大使の丹羽宇一郎さん=東京都港区で

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 「政府の意向に反したものは全て取り締まりたい、そのための武器がほしい、という権力の本音は何も変わっていない」

 法案の成立を許せば「今生きている世代は、ここ五、六十年で最悪ということになる。絶対に阻止する気迫と情熱が欠けている」と警鐘を鳴らす。

<警察官職務執行法> 警察官の職務での質問、土地や建物への立ち入り、武器の使用法などを定めた法律で、8条から成る。戦後間もない1948年に成立。当時盛んだった労働運動などへの対策とされる58年の改正案は、令状なしの身体検査、「公共の安全と秩序」を守る目的での市民の行動に対する警告、制止、保護を目的とした身柄拘束を可能にし、警察官の権限を強める内容だったが、廃案になった。法はその後、わずかな語句の修正を除いて改正されていない。改正反対闘争は、戦後初めて国会外の市民運動が多数党の法案を葬った例とされる。

 

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