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【社会】

研究炉学生に身元調査 原子力規制委が大学に要請

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 原子力規制委員会が、大学などの研究用原子炉を使う学生や研究者などを対象に、精神疾患の有無や犯罪歴といった身元調査の実施を大学側に要請していることが、分かった。核物質を保管する防護区域に頻繁に立ち入る「常時立ち入り者」が対象となる。

 核物質の盗難やテロ行為を防ぐためだが、大学関係者は「心理的なハードルとなり、原子力の研究を志す学生が減りかねない」と困惑。専門家は人権やプライバシーにも関わる問題だと指摘している。

 規制委は原発で働く作業員に身元調査を求めており、電力会社は早ければ今秋にも実施する予定だ。規制委は研究炉を持つ大学側に、同様の調査と申告書の作成を求める。

 国際原子力機関(IAEA)は政府に対し、原発の運転や東京電力福島第一原発の廃炉に携わる作業員の身元調査を実施するよう勧告。規制委は勧告を受けて昨年、原発などを対象に実施の方針を決めた。

 身元調査は十七項目にわたる。氏名や国籍のほか、精神疾患やアルコール依存症の有無を確認する。犯罪歴や職歴を申告させるほか、テロリストや暴力団と関係がないことを誓約させる。

 大学側は学生と面接して申告書の内容を確認する。警察に問い合わせする仕組みも検討している。調査に同意しない学生は常時立ち入り者と一緒に防護区域に入ることができるが、研究活動が大幅に制限される可能性がある。他大学から実習に訪れる学生のような一時的な利用者は除外する。

 原子力規制庁幹部は「常時立ち入り者に学生を含めるかどうかは大学側の判断だ」としているが、大学関係者は「一時的な利用では研究が自由に行えない」と指摘する。虚偽申告があれば、立ち入りを許可する証明書が無効となり、規制委が大学側に行政処分を科す可能性がある。

 文部科学省などによると京都大が二基、近畿大が一基の研究炉を所有している。原子力分野の学科に入学する学生は全国で年三百人程度。福島第一原発事故前は年約千五百人の学生が研究炉を利用していた。

◆大学に重い責任

 <鈴木達治郎長崎大教授(原子力政策)の話> 放射性物質が関わる核テロは大変な損害が出るので、防ぐための身元調査は悪いことではない。プライバシーを侵害される職場に勤めたくないと思うかもしれないが、原子力を学ぶ学生にとっては信頼性が証明される側面もある。だが、学生の申告内容に虚偽があった場合に大学が行政処分を受ける可能性があるのはいかがなものか。大学は個人情報の検証をすることができない。海外では最終的な検証は規制当局が行っている国もある。大学は重い責任を負わされることになる。

 

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