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【社会】

子どもホスピス「もみじの家」開設1年 受け入れ拡大、増える利用者

横になったまま体操する子ども(中央手前)と、笑顔を向ける母親(同奥)=東京都世田谷区のもみじの家で

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 重い病気で医療的ケアが必要な子どもと家族の短期滞在施設「もみじの家」が、東京都世田谷区の国立成育医療研究センターに開設されて一年が過ぎた。開業前は、利用者の条件を「世田谷区在住」などと限定する予定だったが、門戸を広げた結果、首都圏を中心に五月までに延べ四百八十人が利用。二十四時間ケア付きで安心して過ごせる首都圏初の「子どもホスピス」として、需要が高まっている。 (小林由比)

 「ピンクがいいかな。それとも青?」。六月初め、滞在中の子ども三人が集まり、アジサイの花びらをシールや絵の具で描いていた。三人とも重い病気で、横になったり車いすに座ったまま自由に動けない。付き添う保育士や理学療法士らに体勢を変えてもらい、ケアを受けながら遊んだ。

 中野区の福満(ふくみつ)華子さん(13)は出生時の低酸素性虚血性脳症で、脳の障害や難治性てんかんがある。チューブで栄養を体内に送るほか、気管切開の影響でたんの吸入も必要だ。自宅では寝たきりが多いが、母美穂子さん(45)は「友達がいる空間で遊んでいると、人に意思を伝えようという気持ちが出てくるのが分かる」と笑顔で見つめる。

 普段は華子さんの世話で気の抜けない美穂子さんにとって、もみじの家はホッとできる場。この日は二回目の利用で、一泊は親子一緒、もう一泊は娘だけ宿泊した。「ケアをスタッフの方がやってくれて、旅行に来ているよう。子どもの気持ちや尊厳を大切にしてくれるので、親も後ろめたさを感じずに休息できる」

 もみじの家は、開業前の段階では利用者を「成育医療研究センターの患者で世田谷区在住」に限る予定だったが、開業後に条件を取り去った。このため利用者は神奈川、埼玉、千葉、栃木県などに広がり、利用登録者は当初の八十人余から約三百八十人に増加。一日の受け入れ数も三人から八人に拡大した。

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 ハウスマネジャーの内多勝康さん(54)は「口コミで申し込みがどんどん増え、必要とされていることを実感する」と話す。背景には短期入所施設の不足があり、医療的ケアが必要な子どもがスタッフ不足などを理由に利用を断られることが多い現実がある。

 こうした施設の全国的なモデルにと期待されるもみじの家だが、依然として課題は残る。特に運営費の二割は寄付金頼みだ。内多さんは「医療と福祉の両方が必要な子どもに安定的にサービスを提供するため、新しい制度を考えていく責任がある」と強調した。

<子どもホスピス> ホスピスは「余命の短い患者の施設」とのイメージが強いが、難病患者の生活の質を良くするケア施設とも位置付けられる。医療の進歩により難病の子どもの命が救われるようになり、自宅で高度な医療ケアを受ける子が急増。看護する家族を支えるレスパイト(休息)施設の需要が高まっている。成育医療研究センターの推計で、在宅で常時医療ケアが必要な子どもは全国で1万〜1万3000人。

 

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