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【社会】

軍事転用の動き加速 中小企業の技術を防衛省が調査

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 防衛省が自衛隊の装備に使える中小企業の技術がないか調査に乗り出したことが、同省などの内部文書で分かった。装備の調達はこれまで防衛産業の大手企業に依存していたが、防護服向け繊維の開発など中小企業の技術に着目、軍事転用の裾野を広げる。先端技術を国内の防衛分野で活用することで、高い関心を持つ米国や中国などへの売却、流出を阻む狙いもある。一方、産業と防衛の接近が進むことに懸念も生じている。

 米国防総省もすでに日本企業の技術調査に着手しており、民間技術を軍事分野でも使う「デュアルユース」の動きが日米で加速している形だ。

 調査の対象は大手防衛メーカーの下請けに入ったことがない中小企業。内部文書によると、防衛省は二〇一六年十二月に東京都内で中小企業を対象に製品展示会を開いた。参加企業は経済産業省を通じて募り、繊維の他、精密加工などの分野から十社が参加。防衛省の装備調達担当者、自衛隊の陸上、航空幕僚監部関係者が出席した。

 防衛省側は防護服などに利用できる耐久性の高い繊維や、3Dプリンターなどについて提案を受けた。内部報告書は開催目的について「防衛産業に関わりがなかった高い技術を持つ企業を発掘し、防衛事業への参入機会を創出する」と説明した。

 防衛省は取材に「優れた技術を持つ中小企業と協力を進めることは高度な装備品や防衛産業の活性化に極めて重要と認識している」と回答した。

◆社会的な合意不可欠

<解説> 防衛省が中小企業の技術を調査する背景には、既に各国が人工知能(AI)や無人機など民間で開発が進む分野を軍事に応用している現実がある。だが、研究者には戦争協力の反省から、軍事転用に否定的な意見が根強い。防衛省には産業界や学術界などとの社会的な合意形成が求められる。

 防衛省は調査対象の企業に対し、関心がある分野としてレーダーに映りにくいステルス技術や無人機に使う自動制御の技術を提示していた。最新の軍事技術を求める姿勢からは、軍事転用の実績作りを急ごうとする意図さえ浮かび上がる。

 だが、研究者の意識とはかけ離れているのが実態だ。防衛省が二〇一五年度に研究資金を提供する制度を始めたのをきっかけに、日本学術会議は技術と軍事の関係についても議論。軍事研究をしないことを掲げた戦後の声明を堅持すると今春決めた。

 民間技術の軍事転用を進めれば、企業の研究者にも「開発した技術が戦争目的に使われる」との不安を抱かせる。なし崩しで軍事転用の実績を積み上げるのではなく、十分な情報公開や議論が不可欠だ。 (共同・栗原伸夫)

 

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