東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 9月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

原発本、薄れる興味 専用スペース設ける古書店が風化懸念

原発関連書籍の書棚が設けられた古書店「虹書店」=東京都新宿区で

写真

 東京の早稲田通りの古本屋街にある「虹書店」(東京都新宿区)。壁の書棚は足元から天井近くまでぎっしりで、ジャンルごとに仕切った一角に原発に関する書籍が並ぶ。専用スペースを設けている古書店は珍しいといい、東京電力福島第一原発事故の直後、飛ぶように売れだしたのをきっかけに店主の清水康雄さん(60)が集めたが、ここ一、二年は手に取る客はほとんど見なくなった。清水さんは「事故の記憶が風化している」と感じている。

 七月のある日、店の軒先の木箱にはセール品が積まれ、二十円の値札が付けられていた。箱の一つには原発関連が目立つ。「二年以上売れず、捨て値にしても動かない。気づいたら、原発関係ばっかりになっていた」と清水さんはつぶやいた。

 虹書店は一九六六年に創業し、近現代史や社会科学などを専門に扱ってきた。清水さんは「保守から革新までいろんな人がやってくるから面白い」と笑う。第一原発事故前は、書棚のジャンル名は「原爆」で、原発関連の数冊を合わせても二十冊程度。売れ行きは、学生や教員らがまれに買い求めていく程度だった。

 それが、事故の直後から珍しい客が訪れ始めた。小さい子どもがいるという若い母親が放射線防護の本を買っていった。二〇一二年ごろまでは、一日に数冊が売れることも。急きょジャンル名に「原発」を加え、多い時で約三百冊を並べ、書棚一つがいっぱいになった。全国古書籍商組合連合会の理事は「こうした古書店は全国でも聞いたことがない」という。

 仕入れで気にしたのは「原発の推進、反対のどちらにも偏らない」こと。事故の原因を検証した政府や国会の報告書などは資料的価値が高く、意識して集め、すぐに売れた。旧原子力安全委員会が事故前に発行した原子力安全白書は「国が原発の安全神話を信じていた重要な証拠だ」とみる。

 専門知識も重要だと考え、原子力工学や物理学の専門書をそろえた。事実をありのまま知ってもらいたいと思い、第一原発事故直後の福島県の農家やチェルノブイリ原発事故の避難者を取材した作家のルポを置いた。原発を巡る社会問題にも注目し、再稼働差し止め訴訟の原告団が出版した冊子も仕入れた。

 だが最近は、一カ月に数冊売れるか売れないかで、特に学生が手に取らなくなった。それでも清水さんは「新刊を扱う書店は商品の入れ替えも頻繁にあるが、古書店の強みは一つのジャンルを長く置いておけること。原発の書籍の場所はしっかり守りたい」と話した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by