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【社会】

笑顔、大盛り認知症レストラン 注文・配膳間違い「まあいいか」

6月のプレイベントの様子 =実行委員会提供

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 聞いた注文を忘れたり、メニューを別のテーブルに運んだりするかもしれない。接客する店員は全員、認知症の人たちだからだ。「間違えられても『まあいいか』と一緒に楽しんじゃおう」。そんなレストランが十六日から三日間、東京・六本木にオープンする。 (梅村武史)

 名前は「注文をまちがえる料理店」。テレビ局ディレクターの小国士朗さん(38)が発起人の実行委員会が企画した。注文取りや配膳の店員は、首都圏の介護施設から募っている。調理はプロの料理人が担当し、麺類や洋食、デザートなどのオリジナルメニューを提供する。会計はボランティアスタッフが務める。

 きっかけは五年前、認知症の高齢者が暮らすグループホームの取材だった。入所者の食事に同席した際、予定外のギョーザが出てきた。あれっ、ハンバーグでしたよね? 思わず口にしようとした言葉をのみ込み、考えた。

 「ハンバーグがギョーザになったって別にいいじゃないか。おいしければ」

 たいして困らない間違いを指摘して、何が生まれるのだろう。言われた方も、言った方も心が窮屈になるだけじゃないだろうか。

 厚生労働省は二〇一五年に約五百万人だった認知症患者は、二五年に約七百万人に増えると推計している。グループホームで働く介護福祉士の和田行男さん(61)と話し合い「注文をまちがえる料理店」のアイデアが浮かんだ。認知症の人と、そうでない人とが気持ちよく交流できる「社会実験の場所」だ。昨年十一月、IT、飲食、デザインなど多彩な職業の人たちに呼びかけ実行委員会をつくった。

 今年六月、都内で二日間のプレイベントを開いた。八十人の来客があった。同じテーブルに水を何度も運んでしまったり、ホットコーヒーにストローを付けたり…。客へのアンケートでは注文の三分の二に間違いがあった。だが、反応は上々。九割の客が「また行きたい」と回答した。

「社会が寛容になるきっかけになれば」と話す小国士朗さん

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 接客を担当した認知症の人は「昔、食堂で働いていたときは間違えたら怒られた。でもここのお客さんは優しい。だれも怒らない」。内心で「不謹慎といわれないか」と心配していた小国さんは、この言葉に自信を深めた。「寛容な気持ちは、働く人にも客にも居心地のよい空間がつくれる」

 六本木の企画の運営費は、インターネットで資金を募るクラウドファンディングで集めた。四百九十三人が賛同、寄付総額は千二百九十一万円に上った。てへっと笑い、舌をぺろりと出す「てへぺろマーク」が活動のシンボル。今後は、運営のノウハウを希望する飲食店に提供し「てへぺろマークを全国に広める」(小国さん)ことを目指す。

    ◇

 「注文をまちがえる料理店」は十六〜十八日の午前十一時から午後五時半、アークヒルズアネックス「ランディ」(東京都港区六本木一)で開店。一日四回入れ替え制。客は原則として寄付を行った人が対象だが、若干の当日席があり、各日午前十一時から整理券を配布する。フェイスブックで問い合わせに対応する。

◆「注文をまちがえる料理店」のルール

1 間違いを笑顔で許せちゃう雰囲気づくり

2 認知症の方のやりがいがあるイベントに

3 わざと間違いを誘導する仕掛けはしない

4 食中毒やアレルギーがある客に万全対応

シンボルの「てへぺろマーク」=実行委員会提供

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