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【社会】

<検証「加計」疑惑>(5) 地方の獣医師不足 「新設ありき」異論封じ

食肉処理前の豚の異常の有無をチェックする青森県の獣医師=青森県十和田市で

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 解体された豚の内臓がベルトコンベヤーで流れる。青森県十和田市の食肉センター。県食肉衛生検査所に勤務する獣医師らが手早く切り込みを入れ、色や感触で異常の有無を調べていく。一人が扱う量は一日に百数十頭分に上る。

 感染病防止や食肉検査を担う公務員獣医師の存在はあまり知られていないが、役割は大きい。原田邦弘所長は「県民の健康と安全を守る仕事。現場としては人手がもっとほしい」と訴える。

 県の公務員獣医師は百五十五人。昨年度は採用目標の十三人に対し、再募集、再々募集をしてやっと八人確保した。ここ数年、インターンの受け入れや修学資金制度の拡充など人集めに知恵を絞るが、状況は好転しない。

 十和田市内には北里大獣医学部がある。県内唯一の獣医学部で、毎年百二十人弱の獣医師を輩出するが、昨年度の新卒で県に就職した学生はゼロ。「全国各地から集まる学生らは卒業後、地元に戻ってしまう」と県畜産課の担当者はため息をつく。

 全国の獣医師約三万九千人のうち、四割がペットなどの小動物診療に携わる。公務員は二割、家畜を診る産業動物獣医師は一割にとどまる。農林水産省は「全体では需要は足りている」と言うものの、特に地方は公務員獣医師の確保に悩まされてきた。

 加計(かけ)学園が進出する四国は、獣医系大学の空白地。加戸(かと)守行前愛媛県知事が「鳥インフルエンザなど感染症対策に苦労していた」と言うように、愛媛県今治市に新設する目的の一つは偏在解消だ。学園は、四国出身者優先の地元入学枠を設ける予定という。

 ただ、青森県の例を見ると、地方の公務員獣医師の確保は容易ではない。一つの要因は年収の差だ。公務員獣医師は、青森県では所長クラスで一千万円未満。これに対し、ペット開業医なら年収二千万円を稼ぐ人もいる。東北の県職員だった四十代の男性獣医師は「待遇を変えなければ、都会の動物病院に流れるだけだ」と漏らす。

 国家戦略特区の審議の場でも、文部科学省はデータを示し「地方では獣医大学があっても獣医師が増えるわけではない」と指摘した。それでも「新設ありき」の政府に現場の声は届かなかった。

 意に沿わない文科省や日本獣医師会を「抵抗勢力」とみなし、異論を封じる。「加計ありき」との批判が高まると、安倍晋三首相は唐突に「二校でも三校でも意欲があるところには新設を認める」と獣医学部特区の全国展開を打ち出した。

 「政府の説明は矛盾だらけ。大学を作るだけなら解決にはならない」。今治市内で動物病院を経営する獣医師は冷ややかに見る。

 官邸の関与をうかがわせる「総理の意向」文書が発覚して四カ月。「丁寧に説明する」との約束を果たさないまま、安倍首相は今月二十八日召集の臨時国会冒頭で、衆院解散に踏み切る見通しだ。その判断を有権者がどう評価するのか。総選挙での大きな争点となる。 =おわり

 (この連載は中沢誠、望月衣塑子、清水祐樹、原昌志、藤川大樹、土門哲雄が担当しました)

 

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