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【社会】

長時間労働の実態どこまで解明 電通違法残業事件、あす初公判

 広告大手電通(東京)の違法残業事件で、労働基準法違反罪に問われた法人としての電通の初公判が二十二日、東京簡裁で開かれる。同様の事件は罰金刑で済まされることが多く、公の法廷で審理されるのは異例。二〇一五年に過労自殺した新入社員高橋まつりさん=当時(24)=らの長時間労働の実態がどこまで解明されるかが注目される。

 起訴状によると、高橋さんの上司ら幹部三人が、従業員四人に一カ月最大十九時間超の違法残業をさせたとされる。公判では、幹部は罪を問われず、法人としての電通のみが問われる。

 同社の代表として出廷する山本敏博社長は起訴内容を認めるとみられる。検察が罰金刑を求刑して即日結審する可能性が高い。

 電通事件では、高橋さんらが残業を強いられていた具体的な状況や、社内で常態化していたとされる違法残業の背景など未解明の点も多い。検察の提出する証拠が新事実の解明につながる期待があるほか、山本社長が再発防止にどこまで言及し、説明するかも焦点となる。

<電通の違法残業事件> 2015年4月に入社した高橋まつりさん=当時(24)=が同12月に東京都内で自殺。三田労働基準監督署は16年9月、長時間労働が原因だったとして労災認定した。厚生労働省が今年4月までに法人としての電通と、高橋さんの上司を含む本支社幹部らを書類送検。検察は7月、高橋さんら従業員計4人に違法残業をさせたとして、電通を略式起訴し、幹部6人を不起訴処分とした。

夫の彰さんの位牌(いはい)の前で、電通の初公判への思いを語る寺西笑子さん=京都市伏見区で

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◆「全国家族の会」寺西さん「過労自殺もう二度と」

 「(高橋)まつりさんのような犠牲者はもう二度と出してはいけない。今度こそ、そのきっかけにすべきだ」。京都市の寺西笑子(えみこ)さん(68)は涙を拭い、力を込めた。

 身内を過労死などで亡くした遺族らでつくる「全国過労死を考える家族の会」の代表。自らも二十一年前、和食店店長だった夫の彰さんを過労自殺で亡くした。彰さんは年間四千時間という長時間の過重労働の末、うつ病を発症し、自殺に追い込まれた。

 「なぜ救えなかったのか。どうしたら夫は死なずに済んだのか」。そんな自戒の念を胸に、家族の会の活動に取り組み、過労死を防ぐ法律の必要性を国会議員に訴えてきた。二〇一四年には過労死等防止対策推進法が制定された。

 電通では一九九一年にも若手の男性社員が過労自殺し、二〇〇〇年に最高裁が企業責任を認定。その後も複数回にわたり、労働基準監督署から是正勧告を受けている。社員の過労自殺を繰り返す電通に向けた言葉は特に厳しい。

 「懲りていない。社員の命を犠牲に成長する企業があっていいはずがない。社員は一人の人間、家に帰れば、かけがえのない父親や母親であり、自慢の息子や娘なんです。電通は生まれ変わる気持ちで猛省し、体質を根本的に改めて出直すほかない。社長は法廷で、過労死を二度と出さない覚悟を誓うべきだ」

 公判を通じて企業関係者だけでなく、多くの人に長時間労働の危険性への理解を深めてもらうことが重要だと訴える。「まつりさんは決して特別ではない。誰にでも、どこにでも起こり得る。だからこそ、まつりさんがどのように追い込まれたのか、公判で真相を明らかにすることが、事件の教訓やブラック企業への抑止力になる」 (岡本太)

◆電通事件・初公判のポイント

(1)長時間労働の実態が明らかになるか

(2)電通全体で違法残業が常態化していな かったか

(3)反省、再発防止策について社長が何を 語るか

 

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