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【社会】

育て盲導犬 練馬の街で 「本番」想定、区役所や駅で訓練

区役所の中で訓練を行う原祥太郎さんと盲導犬=東京都練馬区で

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 役所や駅を舞台にした盲導犬訓練が東京都練馬区で始まった。さまざまな人たちが行き交う環境で実践的な訓練を積ませる一方、盲導犬の存在を市民に身近に感じてもらう取り組み。育成に時間のかかる盲導犬は供給不足で、関係者は期待を寄せる。 (山田雄之)

 「チェアー(椅子)!」。多くの区民が訪れる練馬区役所の一角で、一歳半のラブラドルレトリバーに、訓練員原祥太郎さん(46)が声を掛けた。「椅子を探して」という意味だ。指示通り、庁内の窓口前の椅子に犬が頭を載せると、原さんは「グッド(よし)!」と頭をなでた。

 訓練は、区を本拠に六十年以上も盲導犬を育成する「アイメイト協会」が実施。住民票の発行を待つ視覚障害者が、順番を呼ばれたとの想定だ。平日の午前中とあって、約二十人が近くのベンチに座っていた。

 この他、階段やエスカレーターの昇降、食堂で伏せて待つ訓練も。居合わせた三十代の女性会社員は「犬をなでたくなったが、集中を邪魔しちゃいけない。頑張って、と祈りました」とにこやかに話した。

 訓練を終えた原さんは、「初めての場所、人が多い状況で、これまで覚えたことを試したかった。うまくやってくれた」と満足げ。

 盲導犬には「本番」に近い訓練が欠かせない。しかし、従来は協会の事務所内が中心。屋外でも行うが、雨など気象条件が悪いこともある。

 「地域ぐるみで育てる必要がある」と区が庁舎の提供を決め、訓練が今夏から始まった。区内を走る西武鉄道にも協力を要請し、練馬駅で改札の通過やホームでの乗降も行う。

 協会の塩屋隆男代表理事(62)は「地域の協力で、計画的な訓練ができるようになった。さらによい盲導犬を提供できるよう励みたい」と意気込む。

◆育成に時間、数限られ

 日本盲人社会福祉施設協議会や全国盲導犬施設連合会などによると、国内で育成され活動する盲導犬は九百五十一頭(三月末現在)だが、潜在的な需要は三千頭とみられている。質の高い盲導犬の育成には時間がかかり、視覚障害者に広く行き渡っていない現状がある。

 一方、国内には十一団体の盲導犬育成施設があり、昨年度に新たに活動を始めたのは計百三十四頭。

 アイメイト協会の場合、生後一年間、里親に預けた後に訓練を開始。四カ月で「ゴー(前進)」など約三十の指示語を覚え、胴輪を付けて人を誘導する練習を積む。うまく行かなければ再び四カ月繰り返す。最後は盲導犬を利用する障害者が協会に泊まり込み、四週間かけて世話や健康管理を学び、計百キロ以上の歩行訓練を経て卒業となる。

 障害者が盲導犬を利用するまで一年待ちのケースもあるという。塩屋代表理事は「訓練して適性が無い犬もいる。障害者との歩行訓練は少人数で行うもので、育成できる頭数は限られる」と話している。

<アイメイト協会> 1948年、協会の前身「塩屋愛犬学校」を故塩屋賢一さんが東京都練馬区に設立。独学で盲導犬の訓練法を確立し、57年に国産第1号の「チャンピイ」(シェパード)を育てた。協会が養成した盲導犬と視覚障害者のペアは今年8月末までに1330組に上る。

 

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