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【社会】

衆議院解散で「働き方改革」法案先送り 「若者の自殺こそ国難なのに」

亡くなった鈴木陽介さんの写真を前に、「働き方改革」について語る母親の吉田典子さん=名古屋市熱田区で

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 安倍晋三首相による突然の衆院解散で、「働き方改革」関連法案の国会審議は先送りになった。その後も、政党の「離合集散」が続く混迷の中、議論は埋没。七年前、新入社員だった二十六歳の息子を職場のストレスとみられる自殺で失った吉田典子さん(55)=三重県伊勢市=は「若者の自殺こそ国難なのに」と嘆く。 (北島忠輔、山田雄之)

 吉田さんは、九月二十八日開会の臨時国会に期待していた。残業時間の上限設定や、若者が活躍しやすい環境整備などを盛り込んだ「働き方改革」関連法案が審議予定だったからだ。だが、衆院は本会議冒頭で解散され、関連法案は提案されなかった。

 吉田さんの長男、鈴木陽介さんは二〇一〇年四月、中部電力に入社したが、わずか半年後の十月、車の中で練炭を使って自殺。入社一年目から取引先に電力の効率化を提案する仕事を担当していたが、「(仕事を)教えてもらえない」「上司から『おまえなんていらない』と言われた」と友人に漏らした後のことだった。

 陽介さんは大学院や米国の留学先で流体力学を専攻。希望通りに中電に入ったが、配属先の三重支店では専門外の仕事に携わった。「新人には過重な負担だったのに、職場で教育や支援を受けられず、孤立を深めた」と吉田さんは話す。

 労働基準監督署も中電も、過重労働やパワハラがあったとは認めていない。だが、吉田さんは「希望とやる気に満ちあふれていた陽介が、ほんの数カ月で命を絶つまで追い詰められたのは事実」と職場でのストレスが原因だったと主張。労基署が労災認定しなかったことを不服として訴訟を起こした。

 陽介さんの部屋には、孔子の言葉を記したノートが残されていた。「理非なきときは、攻めて可なり」。吉田さんは「道理がないことには声を上げるべきだ」と解釈した。自ら産業カウンセラーの資格を取り、名古屋市のNPOで、働く人の悩みの相談に乗っている。

 だが、新入社員の自殺は後を絶たない。一五年十二月には広告大手電通の新入社員だった高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働による過労で自殺。厚生労働省がまとめた過労死等防止対策白書によると、二〇一五年度に過労死・過労自殺(未遂を含む)で労災認定された人は全国で百八十九人。近年は二百人前後で推移しており、防止対策は重要な課題だ。

 吉田さんは「衆院選に向けた政界再編の話ばかりが報道され、働き方改革の話題がほとんど出なくなった。候補者たちは企業から労働者を守る政策を考え訴えてほしい。そして当選後、しっかり法案を審議してほしい」と願っている。

 

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