東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 10月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

ゲノム編集をドーピング指定 遺伝子改変 東京五輪へ検査法課題

写真

 世界反ドーピング機関(WADA)がまとめた二〇一八年のドーピングに関する禁止薬物リストに、遺伝子を自由に改変できるゲノム編集技術を使った遺伝子ドーピングが新たに加えられたことが分かった。リストは来年一月一日から有効となる。

 ゲノム編集は、狙った遺伝子を効率良く改変でき、病気の治療や食物の品種改良への応用が期待される新技術。生命科学研究の世界では「ノーベル賞級」と評価され、急激に広がっている。報告例はないが、筋力増強など運動能力の向上にも活用できるとされ、ドーピング目的での使用が懸念されていた。二〇年の東京五輪・パラリンピックを前に、検査法の開発などが課題となりそうだ。

 WADAは外部からDNAや、遺伝子を改変した細胞を体内に入れて運動能力の向上を図る行為を「遺伝子ドーピング」として以前から禁止している。ゲノム編集を使えば、より簡単かつ巧妙にドーピングできる恐れがあることから、リストに明記して禁止することにした。

 ゲノム編集を引き起こす薬を使うなどして筋力や持久力を増強できる可能性がある。また受精卵でゲノム編集をすれば、生まれつき運動能力を高くした「デザイナーベビー」を得ることも不可能ではない。

 自然に起きる突然変異と見分けが付きにくいため、検査で発見が難しく「いずれドーピングに使われる恐れがある」と指摘されていた。一二年にゲノム編集の一種の「クリスパー・キャス9」という手法が発表され、急速に普及。医療や農業関連の研究が進む。

 医療分野ではエイズなどの治療を目的とする臨床研究が海外で始まった。家畜や水産分野では「ミオスタチン」という遺伝子をゲノム編集で壊し、筋肉を過剰に発達させて肉付きを良くしたウシやブタ、マダイなどが誕生している。

◆不正防止に先手

 <ゲノム編集技術に詳しい阿久津英憲・国立成育医療研究センター生殖医療研究部長の話> 現時点でゲノム編集が筋力増強や持久力向上などの目的でドーピングに利用されているかは不明だが、いずれ使われる可能性はある。禁止リストに加えたのは、こうした動きの先手を打つもので、警告の意味もあるのではないか。医療分野では有効性と安全性が確立した手法はまだなく、安易な人へのゲノム編集の実施には副作用の危険が伴う。

 <ゲノム編集> 生物の遺伝子を狙い通りに改変できる技術。近年「クリスパー・キャス9」という手法が開発され、使いやすさから家畜や植物の品種改良目的で爆発的に普及した。細胞内で特定の遺伝子を切断する酵素を道具として使い、遺伝子を壊したり、別の遺伝子を挿入したりすることができる。医療への応用も模索され、海外では白血病やエイズを治療する試みが始まっている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報