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【社会】

消えない「ネットカフェ難民」 日雇い暮らし 遠い政治

 日雇い労働などをしながら、インターネットカフェを泊まり歩く「ネットカフェ難民」。非正規労働を巡る問題は、旧民主党政権が誕生した2009年の衆院選の争点にもなった。それから8年。ネットカフェで寝泊まりする人々は、貧困や格差の解消に有効な手を打てない政治を遠くに感じている。(藤川大樹)

 東京都大田区のJR駅に近い繁華街。日雇い労働者らが寝泊まりする格安のネットカフェがある。看板には「(漫画とテレビの利用ならば)身分証明書なしで入店可能」「食べ物飲み物持ち込みOK」との宣伝文が並び、コンビニの買い物袋や大きなカバンを持った客が次々と出入りしていた。作業着姿の男性(57)に取材を申し込むと、「少しだけなら」と応じてくれた。

 男性は横浜市生まれ。高校卒業後、池袋のレストランを皮切りに、銀座や六本木で勤務。長野県のリゾートホテルに勤めていた二十九歳の時、同僚の女性と結婚し、ラーメン屋台を横浜市で始めた。

 人生の歯車が狂い出したのは、四十歳を過ぎてからだ。屋台が警察に摘発され、妻とも離婚。それ以降、日雇い労働をやるようになった。「建設現場や下水道管の清掃、(使用期限の切れた)消火器のシールの張り替え。ありとあらゆる仕事をやったよ」

 東日本大震災後は福島県南相馬市と飯舘村で約三年間、東京電力福島第一原発事故に伴う除染作業に従事してきた。今春には福島県内に住民票を置いたまま上京。ネットカフェや公園に寝泊まりしながら、無料の求人情報誌やスポーツ紙の求人欄で仕事を探す日々だ。

 ネットカフェを巡っては、東京都が一〇年、店側にインターネット利用者の本人確認を義務付ける「ネットカフェ規制条例」を制定した。生活困窮者の支援に取り組むNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連(れん)理事長(30)は「身分証は住所がないと作れない。住所不定の生活困窮者らは、ネットカフェに泊まりにくくなった」と話す。代わりに個室ビデオ店やサウナ、二十四時間営業のファミレスなどが受け皿になり、「不安定な住まいの形態はこの十年で、把握が困難なほど細分化している」と言う。

 男性は最近、都内で衆院選に立候補を予定する女性のチラシを各家庭に配った。「政治に関心は」と尋ねると、一箱二百五十円の格安のたばこをくゆらせながらこう口にした。「関心はないよ。(〇九年の)政権交代には期待したけど、何も変わらなかった。今もどんどんひどくなっている。物価が高くなっているのに賃金は上がらない。働けなくなったら、生活保護も考えるよ」

 

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