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【社会】

「不掲載間違い…安堵」 9条俳句訴訟「結果的に自由は守られた」

判決後に記者会見する原告女性(右)と弁護団ら=13日、さいたま市浦和区で

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 「訴えが認められ安堵(あんど)の気持ちでいっぱい」−。さいたま市の公民館が二〇一四年、憲法九条について詠んだ俳句を月報に掲載することを拒否したことについて、さいたま地裁は十三日、違法性を認める判決を言い渡した。表現の自由の侵害を巡る主張は退けられたものの、作者の女性(77)は喜びの言葉を口にし、専門家からは「行政の今後の判断に影響を与えるきっかけになる」と評価する声も上がった。 (牧野新、西川正志)

 「勝てる自信はあったが、不安もあった。公民館の判断が間違いと分かってほっとしている」。判決後に記者会見した女性は胸をなで下ろした。

 自分と同様に、行政からの圧力に苦しむ人々を念頭に「黙っていては何も動かない。どんな小さなことでも発言できるような社会を守るために一歩を踏み出してほしい」と呼び掛けると、会場に駆けつけた支援者らからは、拍手が上がった。

 判決では俳句の掲載請求は認められなかったが、原告らは十六日、さいたま市にあらためて掲載と再発防止を申し入れる予定だ。

 表現の自由を巡る判断について、弁護団は「実質的には表現の自由が侵害されていて、それを元に戻せという判断だと受け止めている」とした上で「結果的に表現の自由は守られた」と評価した。

◆相次ぐ行政介入に影響も

 神奈川県海老名市が「アベ政治を許さない」などと書かれたプラカードを持ち静止するパフォーマンスを禁じたり、兵庫県姫路市が政権批判の寸劇をやめさせたりするなど、行政が公の場での市民活動に介入する事例が全国で相次ぐ。

 こうした中、「九条俳句」訴訟判決について、神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「思想信条の自由を理由に(掲載拒否は不当という)原告の訴えが認められた。今後、市民が持つ権利について行政側は規制しづらくなるのではないか」と影響を分析した。

 上脇教授は「俳句の不掲載は事実上の検閲で、極めて政治的な判断。判決で表現の自由の侵害は認められておらず、必ずしも市民の全ての権利が守られたわけではない」とも指摘。「行政は、政権の意向を忖度(そんたく)するような判断基準を持つべきではない」とした。

 一方、訴訟を支援してきた東大名誉教授(社会教育学)の佐藤一子さんは「公民館は統制的になるのでなく、住民と信頼関係を築いていけばいい」と注文を付けた。

<俳句掲載拒否問題> 2014年6月、さいたま市大宮区の女性が「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」との俳句を制作。女性が所属する俳句会は、活動拠点の三橋公民館の月報に載せる句として選出したが、公民館側が「月報は公平中立の立場であるべきだ」などとして掲載を拒否し、女性は15年6月に市を相手に提訴。裁判では表現の自由や不掲載の正当性などが争われた。

 

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