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【社会】

老いる集落「5年後見えぬ」 千葉・館山市 神戸地区松岡

「高齢化がもっと進んだ時、集落はどうなるか」と、落花生畑の前で話す松岡集落区長の武田一郎さん。耕作放棄地も手入れをして荒れないようにしている=千葉県館山市神戸地区で

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 JR内房線館山駅から車で市街地を抜け、なだらかな山道を走って二十分余り。千葉県館山市神戸(かんべ)地区の松岡集落に入る。水稲、キャベツ、落花生…。雨にけぶる田畑が広がる。

 金比羅さんが祭られた山にある集会所に、豊作を祝う「日待ち」の神事のため男衆が集まっていた。「もともとは日の出を待ちながら豊作を祝う。今は昼食だけだが、昔は二日間やった。大きな釜で米を炊き、ごちそうを作った」と最年長の福原勇さん(86)が懐かしむ。松岡集落は米や麦の産地だった。

 戦後は集落に百三十人ぐらいいて、子どももたくさんいたという。今は六十八人中、二十歳未満は男子小学生が一人だけ。六十五歳以上が84%を占める。

 松岡を含めて十六の集落がある神戸地区の人口は二千九百五十人。三十年前から一割減った。館山市はNPOと連携して市内への移住をPRしており、神戸地区も老後を田舎で暮らしたいと考える移住者が増えた。神戸地区の区長会長黒川憲治さん(73)は「移住してきた人が地区の人口の一割を超える。新しい人がいるので人口減はさほどでもないが、少子高齢化と過疎化は止められない」と話す。

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 衆院選が公示されても松岡では候補者の姿はほとんど見掛けない。「市や県は身近だけど、国政はぴんとこない」と話すのは福原和男さん(64)。自民党の候補者の選挙カーが夜、名前を連呼しながら集落を一度通り過ぎただけで、「超特急で行ってしまった」。

 松岡では大半の人が若い時は会社勤めなどをし、定年後に田畑を継ぐ。田畑を潤す水を堰(せき)やポンプで管理する水当番も今は七軒で回す。「みんな高齢。いつまで維持管理できるか。五年後は見えない」と武田一郎さん(71)は心配する。早川萬專(まもる)さん(72)も「若い世代は出て行って他で働いている。ある程度の年齢になって集落に帰ってきても遅い」と言う。

 過疎化の原因を聞くと、萬專さんは「農業の衰退が一番大きい。自信を持ってうまい米を作っても採算が取れない」とつぶやいた。近くに働く所がなく、若い世代は出て行った。子どもの数が減り、今春、神戸小学校が廃校になり、同じ神戸地区内の小中一貫校に統合された。唯一の小学生は三キロ先の学校にスクールバスで通う。

 「日待ち」の席では、どこに投票するか激論になった。「この地域は自民党と共にやってきた。金や力がないと政治は何も動かない」と武田さん。早川郁夫さん(63)は「それは分かる。でも加計(かけ)や森友問題を無視していいのか。自民党のここは支持する、ここは違うと思っても一票しかない。難しい」と迷う。

 萬專さんは集落の将来を憂う。「村がなくなるんじゃないか。その心配は明日のこと。日本中で過疎化が進んでいる。地方からも声を上げなくては。政治は地方にも目を向けてほしい。でも目を向けてくれた時にはもう遅いかもしれない」 (片山夏子)

<限界集落> 大野晃・高知大名誉教授が提唱した概念で、65歳以上の高齢者が人口の過半数を占め、社会的共同生活の維持が困難な状態にある集落。「集落がなくなるかのような印象を与える」という批判も。国の2年前の調査では、過疎地域や山村、離島などで、65歳以上が50%以上の集落は1万5568カ所あった。

 

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