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【社会】

厚木訴訟、知恵生かせ 大和に「研究センター」設立

調査研究センターで裁判資料に目を通す矢野亮さん=神奈川県大和市で

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 米海軍厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の騒音訴訟の原告らが、四十年以上にわたる訴訟資料の保存、知見の蓄積、騒音の分析などをする「爆音訴訟調査研究センター」を大和市に設立した。騒音訴訟の原告がこうした施設をつくるのは珍しく、メンバーは「厚木だけでなく、他の騒音訴訟の参考になれば」と話す。 (井上靖史)

 基地から東へ約一キロの大和駅(大和市)に近い雑居ビルの一室。四人のスタッフが黙々と資料をスキャナーで電子化していた。「目次だけでもデジタル化すれば、どこに何が書かれているかすぐ調べられる」。事務局長の矢野亮(まこと)さん(66)が狙いを話した。

 騒音訴訟の資料は、一九七六年に始まった第一次分だけでもファイル五十冊以上。広さ六十六平方メートルの室内には、八月四日に提訴した五次と昨年末に最高裁で判決が出た四次を除く三次分までが、四つの大型ラックにぎっしりと収まっている。

 これまでは倉庫や弁護士の事務所に散在していたが、過去の主張や立証方法を参照して新たな論点を掘り起こすことがあり、整理を望む声が出ていた。六月に発足し、他の基地の騒音訴訟に関わる人が閲覧に来ることも想定。運営費は、過去の訴訟で支払われた賠償金の一部を充てている。

 狙いは他にもある。「騒音の解消に取り組む団体はあっても、実態の分析や文献調査などをする団体はなかった」(矢野さん)。基地問題への理解を広げる上で客観的なデータの蓄積や分析が欠かせないとして、その役割を担っていくことにした。スタッフは平日、基地近くで飛来する機種や騒音を調べている。

 厚木基地では八月、空母ロナルド・レーガンの艦載機の岩国基地(山口県)への移駐が始まり、来年五月までに移駐が完了する計画だ。防衛省は「厚木基地周辺の騒音は減る」とする。

厚木基地周辺で飛行訓練をする空母艦載機=神奈川県大和市で

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 しかし、米海軍は九月一〜五日、厚木基地で、空母艦載機の離着陸訓練を五年ぶりに実施。普段使っている硫黄島(東京都)の天候不順が理由といい、基地に近い大和市、綾瀬市の二地点ではこの間、七〇デシベル以上の騒音(掃除機の音と同レベル)は計約千三百回に上った。

 四次訴訟で原告団長を務めた金子豊貴男(ときお)・相模原市議(67)は「移駐しても米軍の運用で、厚木の騒音はなくならない可能性が高い。ここからしっかりと監視、分析していきたい」と強調した。

 センターは活動を支える会員や寄付、スタッフを募集している。問い合わせはセンター=電046(240)1041=へ。

<厚木基地の騒音訴訟> 米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を事実上の母港とする空母艦載機が、帰港中に厚木基地を拠点に飛行訓練などをするため、周辺に深刻な騒音被害をもたらしているとして、住民が損害賠償と米軍機などの飛行差し止めを求めて提訴した。1次から4次までの訴訟ではいずれも賠償は認められたものの、米軍機飛行差し止め請求は却下されている。

 

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