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【社会】

スラムに学ぶ共存の知恵 芝浦工大生、バンコクで居住環境調査

芝浦工大生が再現したスラムのスケッチを見つめる住民ら=9月25日、バンコクで

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 タイの首都バンコク最大の貧困地区「クロントイ・スラム」で、芝浦工大建築学部(東京都江東区)の学生らが居住環境を調査し、論文にまとめる作業を続けている。厳しい暮らしの中で、住民は工夫し、地域のつながりを大切にしていた。学生らは「スラムの現実を伝えるとともに、日本の都市生活を考える参考になれば」と語る。 (バンコク支局・北川成史、写真も)

 指導教員の清水郁郎(いくろう)教授がタイの建築事情に詳しく、学生から昨年、「スラムの実態を知りたい」「日本にない生活の工夫があるのでは」と提案があったのがきっかけ。国際ボランティア団体の協力で、クロントイでの調査が実現した。

 四年生と大学院生の男女十人が参加。学生は昨年九月と今年九月、それぞれ最長で二〜三週間、ボランティア団体の現地施設に寝泊まりし、調査をした。

 午前九時ごろから夕方まで、住宅を訪ね、メジャーで実測する。「何人暮らしですか」「壁の材料は何ですか」。団体のメンバーに通訳してもらい、住民から家族構成やスラムに来た経緯を丹念に聴くとともに、屋外で人の動きを追った。

 家屋は幅約二メートルの路地を挟んで向き合い、一軒の区画は畳三十枚程度。ある平屋には三世代十七人が住んでいた。元々湿地帯で、一部の家の床下には汚水がたまっている。

 建材は安価なコンクリートブロックや木、トタンを組み合わせていた。熱帯で平均気温は三〇度近いが、大半の家にエアコンがなく、窓を格子などにして風を通している。狭いながらも、あつい信仰心から仏壇のスペースを確保し、外壁を思い思いに彩色していた。

 住民は低収入の露天商や荷役を生業とする。人件費がさらに安いカンボジアからの移民も増加している。

 多様な背景の住民が路地で交流し、共存していた。ひさしを設けてベンチを置き、隣人と会話する風景が日常的に見られた。

 大学院生阿部拓也さん(23)は、メーカーが造った住宅で、近隣と交わらず暮らす日本との違いが印象深かったという。

 「『住み良い家って何だろう』と考えさせられた」。阿部さんは振り返る。「住む人が町や家づくりに関わる大切さを感じた。災害後の復興でも大事な考え方ではないか」

 学生らはクロントイ一角の長さ二百メートルの路地を、五十分の一(四メートル)でカラフルに再現したスケッチも作成。バンコクのボランティア団体現地事務所に置いた。スラムの移転計画がある中、住民からは「貴重な記録になる」と喜ばれている。

 今後、学生らは本年度中に調査結果を論文にまとめる。清水教授は「多くの学生は住宅メーカーや設計事務所に進むが、住む側の視点を忘れないでほしい」と願う。

<バンコクのスラム> 1900カ所のスラムがあり、人口の5人に1人に当たる200万人がスラム住民と言われる。チャオプラヤ川沿いにある最大の「クロントイ・スラム」は、3.7平方キロに約10万人が暮らす。地方から来た港湾労働者が住み始めたのが始まり。現在、行政による移転計画がある。

 

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