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【社会】

「危ない」助ける夢今も 「ポケGO」小4死亡事故1年

則竹敬太君の遺影を立て、遺品の水筒を手に「ながらスマホ」の危険性について講演する父崇智さん=2日、愛知県あま市の美和高で(板津亮兵撮影)

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 愛知県一宮市で、スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」を操作しながら運転していた男のトラックに同市の小学四年則竹敬太君=当時(9つ)=がはねられ、死亡した事故から二十六日で一年。「もう誰も被害者や加害者になってほしくない」。父崇智(たかとし)さん(47)は癒えない心の傷を抱えながら、再発防止を訴える講演や、厳罰化の働きかけを続ける。 (高本容平)

 身長は一四〇センチほど。ランドセルを背負い、首に水色の水筒をぶら下げた敬太君が背中を向け、二つ年上の兄が笑顔で向き合う。

 崇智さんは今年初め、敬太君と集団登校をしていた児童の母親から、写真をもらった。事故当日の朝、生前の敬太君を写した「最後の一枚」という。

 いつもと同じ朝。「この姿で元気に帰ってくるはずだったのに」と崇智さん。アルバムに入れたが「つらくて」ほとんど見ることはない。「ぬくもりが消えてしまう」と、敬太君が脱いだパジャマは洗濯せず、ベッドの上に畳んだままだ。

 今も寝るのは居間の祭壇前。はねられる寸前で「危ない」と助ける夢を何度も見る。目覚めると、祭壇に現実を突きつけられる。

 「同じ学年の子に接するのがつらい」と休職した小学校講師の妻は、一月に復職。長男は中学一年になり、部活や勉強の毎日だ。「家族は前を向いて生活を始めている」が、敬太君のことはひとときも頭を離れない。

 三月、名古屋地裁一宮支部で禁錮三年の判決(確定)を受けた男は裁判で「本当につらい思いをさせた」と謝罪。だが、収監後は何も連絡はない。「これだけ悲しみと苦しみを与えておいて。謝罪や反省は法廷の場だけだったのか」

 崇智さんは、国家公安委員長に厳罰化のための道交法改正などを要請したが、実現のめどは立たない。八月には地元の国会議員に「遺族の声を聞いてほしい」と手紙で要望したものの、返事はまだないという。

 一方で、愛知県警によるながらスマホの摘発件数は毎月三千件を超えている。

 再発防止に向け、五月以降は地元の高校など五校を訪問。事故の衝撃でつぶれた敬太君の水筒をかざし、「事故の数だけ、悲しむ家族がいる」と、ながらスマホの危険性を訴えている。

 今月十五日、一周忌の法要であらためて誓った。「私にしかできないことをやっていく。それが使命」

<一宮市のポケモンGO死亡事故> 2016年10月26日夕、愛知県一宮市あずらの市道交差点で横断歩道を渡っていた下校中の則竹敬太君がトラックにはねられ、亡くなった。「ポケモンGO」をしながら運転していた同市の建設会社員の男(37)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪で禁錮3年の判決が確定した。全国で、ながらスマホの危険性が大きく注目された。

◆ながらスマホ運転 摘発・事故減らず

 警察庁によると、スマートフォンや携帯電話などを使いながら運転していたとして今年1〜6月、道交法違反で警察に摘発されたのは全国で47万5013件。前年同期は48万3060件で、運転中に「ながらスマホ」が相次いでいる実態は変わっていない。

 同庁によると、ドライバーの画面注視やボタン操作による交通事故は昨年1年間に928件あり、このうち死亡が17件。今年も9月末までに731件発生し死亡事故は既に15件に上っている。

 同庁は、自動車が時速60キロで走行した場合、2秒間で約33.3メートル進むと推計。このため、ながらスマホ中に、歩行者が道路を横断したり、前の車が渋滞などで停止していたりすると、事故の危険性が高いと指摘する。 (石川修巳)

 

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