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【社会】

聴覚障害の娘描く絵日記紹介 荻窪の書店で展示会

絵日記帳をまとめた著書を眺めながら、娘の麗さん(左)の幼少期を振り返る今井信吾さん=東京都杉並区で(隈崎稔樹撮影)

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 聴覚障害のある娘の成長ぶりを、父は絵日記に残していた。画家で多摩美術大名誉教授の今井信吾さん(79)=神奈川県大和市=が約三十年前に描いた絵日記を展示する「『宿題の絵日記帳』とその後」展が、東京・荻窪の書店「Title(タイトル)」二階ギャラリーで開かれている。絵日記の主人公で、現在は画家として活躍する次女・麗(うらら)さん(35)の作品も並ぶ。 (樋口薫)

 父のアトリエで一緒にお絵描き。母と大きな声で読んだ「おおきなかぶ」の絵本。風呂上がりの姉とお相撲さんごっこ。わがまま、いたずら、おねしょ…。

 どの家庭でも起こるほほ笑ましい光景とともに、二歳から六歳までの麗さんが少しずつ言語を獲得する様子が描かれている。「昔を思い出すね」「小学校に上がりたくないって泣いたの、よく覚えてる」。今井さん父娘は、ギャラリーでにこやかに絵日記を眺めた。

 麗さんは生後三カ月で、生まれつきの高度難聴と診断された。生後半年から日本聾話(ろうわ)学校(東京都町田市)に通い、補聴器の音を頼りに発話を学ぶ聴覚口話法で言語を習得、公立の小学校に進んだ。現在は、聴覚障害で最も重い二級の障害等級ながら、相手の口の動きや表情を読み取ることで会話が可能だ。

 絵日記は、聾話学校で保護者に課せられた宿題で、児童が先生と会話の練習をする際の手掛かりに用いられた。信吾さんはほぼ毎日、スケッチブックにボールペンで、麗さんと三歳違いの姉香月(かづき)さんの日常生活を写し取った。その約四年分の中から厳選し、「宿題の絵日記帳」(リトルモア)として今年七月に出版。反響を呼び、オリジナルの絵日記の展示が決まった。

 麗さんは多摩美大を卒業し、今では人気作家角田光代さんの単行本の装画を手掛けるなど注目の若手画家だ。ゼロ歳から八歳までの三児の母でもある。「私は子どものためにここまでできない。読み返して、両親はすごく頑張ったんだなと思う」と感謝を口にする。

 「麗が獲得する言葉は、家族にとっての宝物でした」と振り返る信吾さんは、「障害の有無、年代を問わず、共感してもらえるのでは」と話している。

 Titleの住所は杉並区桃井一の五の二。展示は二十三日まで。入場無料。二十一、二十二日は休み。

クリスマスツリーの飾り付けをする麗さん(左)と姉の香月さんの様子を描いた絵日記の一コマ=「宿題の絵日記帳」より

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信吾さんのひざの上で「小学校へ行くのいやだ」と不安で泣く麗さんの様子=「宿題の絵日記帳」より

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