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【社会】

不妊治療で2割退職 両立困難 支援制度立ち遅れ

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 仕事をしながら不妊治療をした人のうち、両立が困難になって退職した人が五人に一人いることが、支援団体の調査で分かった。検査や治療で頻繁に通院しなければならず、生理周期に合わせて急に診察日が決まるなど、予定を立てにくい。上司らに相談できないといった精神的な負担もある中で、職場の制度や国の支援は遅れている。治療を続ける本紙読者らは「理解が広がってほしい」と訴える。 (奥野斐)

 不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」が今年三〜八月に実施したインターネット調査によると、不妊治療と仕事の両立を経験した五千百二十七人のうち、二千二百三十二人が両立が困難で「働き方を変えざるを得なかった」と回答。その半数の千百十九人が退職していた。退職したと回答した人は三十代が多かった。

 ファインの松本亜樹子理事長は「多くの働き盛りの女性が、治療のために仕事を辞める『不妊退職』をしている現状は、企業にも大きな損失。女性活躍が求められる中、両立支援策は待ったなしだ」と指摘する。

 一方、職場に「サポート制度がある」と答えた人は全体の5・8%。治療休暇制度があっても、一カ月前までの申請が必要など使いづらい場合もある。

 厚生労働省によると、体外受精など高度な不妊治療に対する国の助成制度はあるが、仕事との両立支援策はない。松本さんは「管理職や人事担当者に研修で不妊治療が何かを分かってもらうことが大切。国も企業に助成金を出すなど支援してほしい」と求めた。

◆「休ませてと言えず」 「仕事、子ども諦めたくない」

 「職場に迷惑をかけられないと思った」。東京都内の女性(52)は治療を続けるために、三十七歳の時、小学校教諭を辞めた。

 転任したばかりの学校で、担任は外れていたが、高学年の授業の補助や校外学習の付き添いなどを担当。夜間診察がある専門病院に週一回通っていたが、治療が進むにつれて時間は選べなくなった。翌年以降に担任になれば、さらに通院は難しくなると思い、退職を決めた。「同僚は普通に妊娠しているのに、自分だけ休ませてとは言えなかった」

 退職後、体外受精では週二〜三回通院し、半日待たされたことも。四十六歳で治療をやめ、今は週一、二日パートで働く。「治療を続けられる制度があれば、仕事を辞めずに済んだかも」

 現在、治療を続ける本紙読者で団体職員の女性(40)=葛飾区=は、有期雇用のため「治療のことを伝えれば、契約更新がないのでは」と退職の不安を抱える。

 中小企業の海外進出を後押しする事業に携わり、年に数回、約一週間の海外出張があるが、なんとか日程を調整して週末や出勤前などに通院。治療で体調が悪く、「顔色が悪い」と言われてもごまかしながら働いた。「治療費は高額。仕事も子どもも諦めたくない。理解が広がってほしい」

<不妊治療> 不妊原因となる疾患の検査、治療を経て、子宮内に精子を注入して妊娠させる人工授精、卵子と精子を取り出して体の外で受精させ、子宮内に戻す体外受精などで、妊娠・出産を試みる治療。一部を除き公的医療保険が適用されず、体外受精では1回30万〜40万円かかるとされる。国立社会保障・人口問題研究所の2015年調査では、18・2%の夫婦が不妊検査や治療を経験。日本産科婦人科学会によると、同年に体外受精で5万1001人が生まれた。

 

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