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【社会】

在外被爆者と和解縮小 国「死後20年、請求権消滅」

 海外在住の被爆者と遺族が「被爆者援護法の適用外とされたのは違法」として国に損害賠償を求めている集団訴訟で、国が昨年九月以降、被爆者の死後二十年が経過した場合は民法で請求権が消える「除斥期間」に当たるとして、一部の遺族との和解に応じない方向で手続きを進めていることが二十五日、分かった。原告側は「突然、こうした主張を始めた国の姿勢には反省も誠実さも感じられない」と反発している。

 被爆者は援護法に基づき、医療費や健康管理手当(月約三万四千円)が国から支給される。ただ、国は一九七四年、在外被爆者を適用外とする通達を出し、二〇〇三年の廃止まで対象外とするなど、国内外で被爆者の線引きを続けてきた。

 これを不服とする在外被爆者らが相次いで訴訟を起こし、国側が敗訴。〇八年には被爆者健康手帳申請の来日要件を撤廃する改正援護法が成立し、一五年に在外被爆者への医療費全額支給を最高裁が認めた。

 こうした中、国は裁判を通じて在外被爆者への賠償を進めており、これまで大阪や広島、長崎などの各地裁で和解が成立。しかし、昨年九月以降、援護法の適用外とした不法行為は被爆者の死亡により終了したとして「死後二十年以上たった遺族に関しては請求権がない」との立場を取るようになった。

 「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」によると、以前は、被爆者の死後二十年が経過している遺族との間でも和解が成立したケースがあるという。同会の市場淳子会長は「手のひら返しとも言える国の方針転換で不平等な状態が生じ、被爆者や遺族の心が痛めつけられる恐れがある」と話している。

 厚生労働省のホームページによると、在外被爆者は、広島や長崎で被爆し、戦後、韓国に帰国したり、海外に移住したりした人が大半を占めている。一七年三月現在、被爆者健康手帳を所持する在外被爆者は約三千二百人。

<除斥期間> 法律上の権利を行使しないまま一定の時間が経過すると、加害者に損害賠償を請求する権利が自動的に消滅するとされる考え方。自分が受けた損害や加害者を認識していなくても進行する。明文化はされていないが、民法の条文を解釈した最高裁の判例が根拠になっている。不法行為に対する損害賠償請求権の場合、不法行為があった時から20年。一方、同じように権利が消滅する消滅時効は、損害や加害者を認識した時点から3年で到来する。

 

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