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【社会】

大飯再稼働 町民説明 尽くされたのか

大飯原発の3号機(右)と4号機=26日午後、福井県おおい町で

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 大飯原発3、4号機の再稼働に、西川知事が同意した。「再稼働には賛成したいが、町民の疑問が解消されたとは思えない…」。合併前の大飯町の元助役で、半世紀前、原発誘致のため町民の説得に走り回った永井学さん(84)は、性急なゴーサインに苦言を呈す。 (山谷柾裕)

 今年七月、町の同意判断のために開かれた町民説明会。約二百人の参加者の中で、永井さんは誰よりも長く質問をぶつけた。3、4号機の安全性を確認したかったが、壇上にいた関電、経済産業省、内閣府の担当者の回答は一般論ばかり。「審査を担った肝心の原子力規制委員会が来ていない。これでは、ただのセレモニーだ」。永井さんは怒りを押し殺しながら半世紀前を思い出していた。

 一九六九年、当時の町長が原発の誘致話を持ってきたとき、永井さんは畜産課員だった。兄(故人)は広島で被爆し、耳の後ろにやけどが残っていた。職員向けの説明会で質問を重ねたが「原爆とは違うらしい、というくらいしか分からなかった」。

 その二年後、誘致の担当課に抜てきされ、町民説得の最前線に立つことに。当時、農業振興を手掛けていたが、企業誘致が進まず、行き詰まりを感じていた。原発ができれば税収増や雇用促進が期待できる。「クエスチョンを持ったまま、走らざるを得なかった」

 町民が賛否で二分される中、永井さんらが関係省庁に日参して要請したのが住民説明会の開催だった。時に怒声を浴びながら住民と膝を突き合わせた。「国策なのに、なんでこっちがここまでしなきゃならないのか、という声も役場にはあった。でも徹底的に説明することで、はじめて信頼感を得た」。いつからか、自身の原発への疑問も消えていたという。

 だが、福島第一原発の事故で、町民の信頼は再び揺らいだ。3、4号機は必要な安全対策を終えたとみなされているが、永井さんの目には事故時の避難道路の整備が不十分と映る。原発がある大島半島から内陸部へは、原発建設とともにできた「青戸の大橋」を渡るか、半島付け根への迂回(うかい)ルートしかなく「橋をもう一つ造るべきだ」と注文する。

 地元の同意手続きは終了。「自治体は事業者の横暴を止めるだけの抑止力を持たなくては。せめて同意後も国や関電に(避難道路整備など)注文を繰り返していくべきだ」。長年、原発の地元行政に携わった一人としてそう信じている。

 

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