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【社会】

民泊、解禁前に規制へ トラブル続出 自治体条例準備

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 一般住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」が来年六月に全国で解禁されるのを前に、東京都新宿区と大田区が全国に先駆けて、曜日や地域で営業を規制する独自の条例案を区議会に提出した。許可を得ない「ヤミ民泊」が横行し、騒音などを巡るトラブルが起きているためだ。ただ、同様の規制が各地に広がれば、民泊普及を目的に制定された新法が骨抜きになるとの懸念もある。

 「条例には従うつもりだが、残念だ」。来年六月の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行後に、新宿区内の空き室で民泊営業を考えていた五十代の男性は肩を落とす。「多くの旅行者の受け皿になれると思っていたが、平日に宿泊できなければ長期滞在する客は使えない」

 新宿区の条例案は、住居専用地域で月曜日正午から金曜日正午までの営業を禁止することが柱だ。同区は歌舞伎町や新宿御苑、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックでメインスタジアムとなる新国立競技場などの観光スポットがあり、既に東京二十三区で最多の四千超の民泊物件がある。多くは無許可とみられる。

 一方で、区には「ごみ出しのルールを守らない」「騒音に困っている」といった苦情が相次いでおり、独自規制は重要課題。区議会の質問では、より厳しい規制が必要との意見も出た。

 他の自治体では民泊を巡るトラブルが訴訟や事件に発展した例もある。

 大阪市では八月、分譲マンションでヤミ民泊を営業したとして、管理組合が部屋の所有者らを相手取り損害賠償などを求めて提訴。民泊利用者とみられる外国人がエレベーター内でたばこを吸うなどのトラブルが多発していたという。福岡市では七月、無許可の民泊物件で外国人女性が乱暴される事件も起きた。

 観光庁関係者によると、国の法律に上乗せして民泊営業を制限する条例の制定を検討している自治体は数十に上り、東京の区部だけでなく北海道や長野県、京都市なども含まれる。

 観光庁の調査では、ホテルの稼働率は年々増加傾向にあり、京都市では二〇年に宿泊施設が一万室不足するとの試算もある。政府は、二〇年に訪日客を四千万人にする目標達成には、民泊は必須のインフラとみる。

 観光庁は「規制は最低限必要性がある場合」にすべきだとの立場で、同庁担当者は「他の自治体が規制するからうちもやるというのは、法の趣旨に反して望ましくない」と苦言を呈する。

 民泊に詳しい和歌山大観光学部の広岡裕一教授は「民泊によって街の環境が一変することがある」と自治体による独自規制に理解を示す一方、「規制を厳しくしすぎると新法が骨抜きになる。慎重に議論し、地域の実情に合った条例を目指すべきだ」と指摘した。

<民泊> 住宅を旅行者に有料で提供する宿泊形態。比較的安価で、日本人の生活が体験できると外国人旅行者に人気がある。現在は、旅館業法に基づき簡易宿所の許可を得るか、政府の国家戦略特区に指定された地域で首長の認定を受ける必要がある。来年6月の住宅宿泊事業法施行後は、届け出によって年間180日を上限に誰でもどこでも営業が可能になる。住環境の悪化が懸念される場合は、都道府県の他、政令市、中核市などが独自に上限を引き下げたり地域を制限したりできる。

 

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