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【社会】

教育勅語容認は「歴史ゆがめる」 教材否定せぬ政府に教育界反論

「教育勅語を肯定的に扱うことは歴史をゆがめる」と話す中嶋哲彦・名古屋大教授(中)、広田照幸会長(左)ら=12日、東京都千代田区の文科省で

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 教育勅語を教育現場で肯定的に扱うことは否定されないといった今春の国会での政府見解について、教育学の研究者らでつくる日本教育学会は十二日、「歴史的事実をゆがめるものだ」と批判する報告書を文部科学省に提出した。東京都内で記者会見した広田照幸会長らは「道徳教育に(政府見解を)利用する人が出るかもしれない。現場の影響が心配だ」と危機感を示し、見解の撤回などを求めた。 (原尚子)

 「戦後否定された価値観を子どもたちに押しつけることになる。大きな危惧を持っている」。同学会の教育勅語問題ワーキンググループの座長を務めた名古屋大学の中嶋哲彦教授は会見で声を強めた。

 政府見解が示されたきっかけは今年二月、大阪市の学校法人「森友学園」の系列幼稚園で園児に教育勅語を暗唱させていたことが取り上げられたことだった。これを問題視する野党議員に、政府は「普遍的な内容が含まれている」などとして、「(憲法や教育基本法に反しない)適切な配慮のもとに」使用を容認する見解を示した。当時の稲田朋美防衛相も「(教育勅語の)核の部分は取り戻すべきだ」などと答弁した。

 報告書は、政府が普遍的とする「親孝行、兄弟仲良く…」というくだりは「危急の大事が起こったならば一身を捧(ささ)げて皇室国家のためにつくせ」という言葉に続いていると指摘。これは日本国憲法の三原則「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」のいずれにも反すると批判している。

 さらに、「教育勅語を唯一の指導原理とする教育は許されないが、原理の一つとしてなら可能」とする政府見解にも、「根拠としている一九四六年の文部次官通牒(つうちょう)(通達)は国会決議で否定されている」と反論した。

 中嶋教授は会見で「憲法に反するのは明らかなのに、政府が教育勅語を違反と認めなかったので、現場がミスリードする可能性がある」と危ぶんだ。

 文科省は取材に「教育勅語は憲法や教育基本法制定の時点で失効し、もはや意味を成さないものと認識している。何が憲法や教育基本法に反するかは個別の事例ごとに各学校の設置者や都道府県が判断するものと考える」と答えた。

 日本教育学会は会員数約二千九百人で、教育学関係の学会では国内最大規模。ワーキンググループは報告書を全国の教育委員会などに送付するほか、学会のホームページで公開。教育現場で参考になるよう「暗唱や学校での掲示、音声放送などをしてはならない」などと提案している。

<教育勅語> 1890年に発布。明治天皇の名で国民道徳の根源や教育の基本理念を明示。父母への孝行、夫婦の和、博愛、義勇奉公などの道徳項目を記した。学校での奉読が進み、「御真影」(天皇、皇后両陛下の写真)とともに保管されるなど神聖化され、国や天皇に命をささげるよう求めた昭和期の軍国主義教育と結び付いた。1948年、衆参両院が教育勅語の排除や失効を決議し、旧文部省が学校から教育勅語を回収して教育現場から排除された。

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