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【社会】

LGBT企画<下> 悩める若者に未来を

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 「子どもたちが自分の性や性的指向で悩み、孤立しない社会にしたい」。今回の性的少数者(LGBTなど)企画に集まってくれた当事者三人は、そう口をそろえます。二回目は「未来」をテーマに、それぞれの活動への思いや、社会の現状を語ってもらいました。

室井舞花さん(30)

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◆教科書に「多様な性」載せたい

 「思春期になると異性に関心を抱くようになる。これは誰にでも起こる」−。中学二年の時、保健体育の教科書でそのような文章を読み、「私は間違っているんだ…」と強くショックを受けました。当時、心ひかれる相手は同級生の女の子。自分の性的指向に疑いを持ち始めていたんです。

 同性愛者は世の中で「普通ではない」「笑われる」対象だと当時は思っていて、この教科書の一文が決定打になった。「女の子が好き」と認めると、自己否定感が募る。自分を受け入れられず、苦しかったです。

 今も教科書は変わっていないので、つらい思いをしたり、将来を悲観したりしている子がいるかもしれない。学校での教育内容の基準となる学習指導要領に「多様な性」についての記載を求め、三年前から署名活動を始めました。二〇二〇年度からの教科書に反映される今春の改定には、残念ながら入らず、約十年後の次を目指しています。

 多くの当事者が学校生活でいじめを経験し、自殺の要因にもなっています。私は十八歳で同性愛者の友人ができ、話すことができましたが、思春期の全ての子が「大丈夫」と安心できる教育に変えたいのです。

<むろい・まいか> 「教科書にLGBTを!ネットワーク」共同代表。レズビアン。著書に「恋の相手は女の子」(岩波ジュニア新書)。愛知県出身

教科書に「多様な性」の記載を訴える若者たち=「教科書にLGBTを!キャンペーン」提供

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◇文科省 現段階「難しい」

 新学習指導要領では、中学校の保健体育で「身体の機能の成熟とともに、異性への関心が高まったりする」と書かれている。文部科学省は「現段階で性的少数者を扱うのは、保護者や国民の理解、教員の適切な指導などを考慮すると難しい」とする。

 ただ、教科書へのLGBTの記載は増えており、本年度から高校の家庭科、来年度からは公民科などのそれぞれ一部に載る。清水書院の「新政治・経済」では、「法の下の平等」のページで差別や偏見の解消を目指すべき対象として紹介。担当者は「条例や法整備の動きをふまえ、入れるべきだと考えた」と話す。

松中権さん(41)

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◆五輪に交流拠点設けよう

 二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックの開催中に、LGBTの交流や情報発信の拠点となる施設「プライドハウス」を都内につくろうと動いています。一〇年のバンクーバー冬季五輪から、支援者らによって国際大会の開催都市にこうした施設が設けられていて、東京でも各国の当事者らが交流し、理解を深めるイベントを開けたらと思います。

 昨年のリオデジャネイロ五輪では、LGBT当事者だと公表した選手が五十人以上に上り、過去最多でした。一方、日本のスポーツ界で公表している人はほとんどいません。周囲の理解不足や差別的な感情を恐れてのこともあるでしょう。

 僕は、一五年に米国大陸の国々が参加する大会が開かれたカナダ・トロントと、昨年のリオ五輪のプライドハウスに行きました。特にトロントは、子どもの遊び場があり、トランスジェンダーの選手の講演会が開かれ、充実していました。

 日本中、世界中から人が集まる機会を生かせたら。できれば、東京では五輪後もレガシー(遺産)として残るような施設にしたい。当事者らが日常的に顔を出して互いにつながったり、家族が情報を得られたりする場が理想です。

<まつなか・ごん> 認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」代表。ゲイ。著書に「LGBT初級講座 まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」(講談社+α新書)。石川県出身

リオ五輪でのプライドハウスの様子=松中権さん提供

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◇東京都、差別禁止条例検討

 五輪では、2014年2月のソチ五輪の際、開催国ロシアで同性愛宣伝禁止法が成立したことなどに欧米各国の首脳が反発して開会式を欠席。同年12月、五輪憲章に性的指向による差別禁止が盛り込まれた。

 東京大会では、基本コンセプトに「多様性と調和」を掲げ、五輪で使う物品の製造、流通などに関するルールを定めた「調達コード」に性的指向・性自認による差別を排除する方針を明記している。東京都の小池百合子知事は今月6日、五輪憲章の理念を広めるための条例制定の検討を始めたことを明らかにした。

◆三橋順子さん「法整備 地方から発信期待」

 トランスジェンダーで、性社会・文化史研究者として明治大などで講義をしてきた三橋順子さんは、昨今の学生のLGBTへの関心の高さに驚く。明治大での本年度春学期の「ジェンダー論」受講者は四百八十人を超えた。一方、社会的には「東京五輪までに、どれだけ後世に残る法律や条例を作れるかだ」と話す。

 東京都渋谷区や世田谷区では二〇一五年、同性カップルを結婚に相当する関係と認める同性パートナーシップ制度が施行。全国では両区や札幌市、那覇市など六自治体に広がり、今年十月末時点で、計百三十四組(NPO法人「虹色ダイバーシティ」調べ)の同性カップルが公的に認められた。

 世界では、七十カ国余でLGBTなどへの差別を法律で禁止し、日本でも法整備を求める声が上がっている。今年七月には、当事者の地方議員が世話人の議員連盟が発足。三橋さんは「当面は、地方から行政が動くことを期待したい」と話している。

 文・奥野斐/写真・中西祥子、奥野斐/デザイン・高橋達郎/紙面編集・加藤秀和

 

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