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【社会】

孤立死、遺品は語る 整理の現場に同行

孤立死した男性の部屋で遺品を整理する遺品整理専門会社の従業員ら=東京都豊島区で

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 少子高齢化に伴い増加が心配される高齢者の孤立死。東京・巣鴨のアパートの一室で、ひっそりと亡くなった男性(69)の遺品整理に同行させてもらった。

 歌手の故・坂本九さんのラベルが貼られたカセットテープ、年季の入った懐中時計、買ったままのカップ麺…。「とげぬき地蔵」で知られる巣鴨の高岩寺に近い住宅街のアパート。キッチンと六畳の和室は生活用品や雑貨であふれ、足の踏み場もなかった。

 亡くなって一カ月後の九月下旬、部屋は死亡時のままだった。遺品整理専門会社「キーパーズ」の従業員らが、貴重品の他、手書きのメモや写真を丁寧に取り出し、立ち会ったおい(50)に手渡した。生前の男性の暮らしぶりをうかがい知ることができる遺品だ。

 男性は五人兄弟の三男。結婚はせず、デパートの催事場などで、伝統工芸品を実演販売する仕事をしていた。亡くなる数日前、男性の同僚からおいに「電話の応答が普通ではなかった。様子を見に行ってほしい」と連絡があった。男性は「万一の時のために」と、おいの携帯番号を同僚らに伝えていた。

 訪ねると、男性が足を引きずりながら顔を出した。「今週はほとんど外に出ていない」とやつれた様子だったため、食事に連れ出し元気づけた。五日後、同僚から「連絡が取れない」と電話があり、アパートを再訪すると、イスに腰掛けた男性が目に入った。「何してるの」。声をかけても返事はなかった。

 死後二日がたっていた。万一に備えていたのか、「葬儀はせず、供養塔に入れてほしい」と部屋に貼り紙があった。死因は病死とされたが、過去四年間、通院した記録は残っていなかった。「叔父は親の介護を引き受け、自分の家族を築く時間もなかった。人生の心残りはあったのではないでしょうか」。おいは寂しそうに語った。

 東京都監察医務院によれば、二十三区での孤立死は昨年、四千六百四人。二〇〇三年と比べ六割以上も増えている。毎日平均十二人が、だれにもみとられずに一生を終える。

 みずほ情報総研の藤森克彦・主席研究員は「昔は同居の家族がいて、緊急時の対応や死後の遺品整理をしてきた。これからは、その役割を公的機関や地域コミュニティーが担う必要がある」と話す。

 おいは地元の町会で、民生委員を中心とした見守り運動に参加し始めたばかりだった。「孤立死は人ごとだと思っていた。叔父とは年に一度は会っていたが、もっとひんぱんに連絡すればよかった」 (藤川大樹)

 

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