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【社会】

歩く視覚障害者 スマホの音声で誘導 「聞こえるマップ」開発中

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 視覚障害者が歩きやすい街になるよう「聞こえるマップ」を。警察庁や障害者支援団体が、衛星利用測位システム(GPS)を活用し、横断歩道の信号の色や目的地までのルートをスマートフォンの音声で案内するシステムの実証実験を始めた。多言語化すれば外国人観光客らの利用も見込まれ、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックまでの実用化を目指す。 (福岡範行、石川修巳)

 「大宮駅方向は赤」「信号が変わります」。警察庁が十四日、さいたま市で実施した実験では、地元の視覚障害者十人が持つスマホから音声案内が流れた。

 アプリを起動して新システム対応の信号機に近づくと、自動で音声が出る。アプリの画面を押すと、歩行者の青信号を四秒ほど延長もできる。これまでは専用端末が必要だったが、スマホ一つで可能にする。

 体験した同市視覚障害者福祉協会の山崎道子理事長(64)は「信号が変わったことが音声で分かる。とても便利」と喜び、スマホを手に持たずに済むよう改良されることを期待した。

 視覚障害者の支援団体、日本視覚障がい情報普及支援協会(東京)が開発中のアプリでは、イヤホンからの音声で現在地や道順を知らせ、目的地までのルートを自動的に案内する機能も加えている。支援協会の能登谷(のとや)和則理事長(62)は「避難所や飲食店の情報もアプリで分かるようにし、『聞こえるマップ』にしたい」と話している。

自宅近くの横断歩道前で夜の横断の難しさを語る視覚障害者の下堂薗保さん=東京都品川区東大井で(松崎浩一撮影)

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◆横断方向の伝達に課題

 歩行支援システムは、特に夜間の効果が期待される。警視庁交通管制課によると、都内では周辺の迷惑にならぬよう、午後八時〜午前七時はボタンを押しても、音が鳴らない設定の音響式信号機が多いためだ。

 東京都品川区の視覚障害者下堂薗(しもどうぞの)保さん(77)は、深夜は出歩かないようにしている。「日中は助けてくれる人もいるが、夜遅くは、ほかに通行人もいないから」。信号機からの音がないと、横断歩道を渡るタイミングも分からない。人の気配と車の音だけが頼りだ。「慣れていない場所を歩くときは、本当に困る」と訴える。一人で歩いていて真っすぐ進めず、中央分離帯につまずいた経験もある。

 このシステムも課題は残されている。音響式信号機は道路を挟んで交互に音を出して横断方向を伝えているが、スマホでは再現できない。眼鏡型の端末で顔の向きを感知して横断方向を知らせる構想もあるが、実現のめどは立っていない。

 アプリの設計を担当する視覚障害者の井戸上(いどがみ)俊明さん(45)=東京都港区=は「アプリはあくまで音響式信号機を補う手段。必要なときだけでも信号機の音を鳴らせるよう、理解が広がってほしい」と訴える。 (福岡範行)

<音響式信号機> 視覚障害者らに音で青信号を伝える。「ピヨピヨ」「カッコー」といった擬音を鳴らす方式が大半で、「とおりゃんせ」などのメロディーやチャイムを鳴らすタイプも。警察庁によると、1955年9月、東京都杉並区の視覚障害者施設近くの交差点に設置したのが最初。今年3月末時点で、全国で2万3000カ所ある。毎年数百カ所ずつ増えているが、20万8000カ所の全信号機の1割程度にすぎない。

 

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