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【社会】

滋賀の病院 入院患者殺害の再審決定 高裁「自然死の疑い」

再審が決まり、両親とともに記者会見に臨む西山美香さん(手前)=20日午後、大阪市北区の司法記者クラブで

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 滋賀県東近江市の湖東記念病院で二〇〇三年、患者の人工呼吸器のチューブを抜いて殺害したとして、殺人罪で懲役十二年の有罪判決を受け服役した元看護助手西山美香さん(37)=同県彦根市=が申し立てた再審請求の即時抗告審で、大阪高裁は二十日、再審開始を認める決定をした。殺人の被害者とされた患者が「自然死した疑いが生じた」と指摘、殺害を認めた自白は「警官や検事による誘導があった可能性がある」と批判した。

 高裁の審理では、確定判決が「急性低酸素状態」と認定した患者の死因の妥当性や、チューブを抜いて窒息死させたとする西山さんの自白の信用性が争点になった。

 後藤真理子裁判長は決定理由で、患者は窒息ではなく「致死性不整脈で死亡した可能性が高い」とする弁護団の主張を認め、死因を窒息と結論付けた司法解剖の鑑定書は「証明力が揺らいだ」と判断。「患者の死因が致死性不整脈である可能性は低くはなく、窒息と合理的疑いなく認定できない」と述べた。

 自白の信用性については「人工呼吸器の管を外したのか外れたのかなど、多数の点で(供述は)めまぐるしく変遷している」と疑問を呈した。チューブを外し、異常を知らせるアラームを消したとした西山さんの自白には、捜査当局による誘導の可能性を指摘。「犯人と認めるには合理的な疑いが残る」と結論付けた。

 西山さんは、県警から任意聴取を受けていた際に殺害を自白し、〇四年七月に逮捕された。公判で否認に転じて無罪を主張し、自白の理由を「取り調べがきつくなった同僚看護師をかばおうと思った。刑事に好意を持った」などと訴えた。だが、〇五年十一月の大津地裁判決は「自白は自発的に行われ、迫真性もある」などと懲役十二年を言い渡し、最高裁で確定した。

 西山さんの捜査段階の自白は二転三転し、供述調書は三十八通、自ら罪を認める上申書、自供書、手記は五十六通も作成された。弁護団は死因の主張に加えて心理学者の意見書も証拠提出し、西山さんは「対人関係で迎合しがちな性格」と主張してきた。

 西山さんは和歌山刑務所で服役し、今年八月二十四日に満期出所した。

<湖東記念病院人工呼吸器事件> 2003年5月22日午前4時半ごろ、滋賀県東近江市(旧湖東町)の湖東記念病院の3階病室で、前年秋から慢性呼吸器不全で入院していた男性患者=当時(72)=が死亡しているのが見つかり、当直勤務の看護助手だった西山美香さんが殺人容疑で逮捕された。西山さんは捜査段階で「人工呼吸器のチューブを外して患者を殺害した」「助手の待遇に不満があった」などと自白したが、公判では「取り調べの刑事に誘導された」と否認に転じた。現在の再審請求は2度目で12年に申し立てた。

◆元看護助手・西山さん「裁判官が分かってくれた」

 「最高の誕生日プレゼントになった。両親に感謝したい」。元看護助手西山美香さんの再審開始を認めた二十日の大阪高裁決定。今月三十八歳を迎える西山さんは、長い服役を支えた両親と手を取り合って抱き合い、涙を流した。

 この日、西山さんは白いマフラーを巻いて弁護団と裁判所へ。午後二時ごろ、高裁の指示により一人で受け取った決定文には再審開始を示す主文。「裁判官が分かってくれた。不安な気持ちが吹き飛んだ」。西山さんは廊下で泣き崩れ、その姿に弁護士は「今までの苦悩と喜びが表れている」と目を潤ませた。

 西山さんと共に大阪市内で記者会見した母令子さん(67)は「やっと一歩が始まった」と喜びを口にし、「検察にはこれ以上邪魔しないでほしい」と訴えた。父輝男さん(75)は娘が逮捕された当時や失われた年月を振り返り、「こんなばかな話はない。再審が開始されれば、やっと社会に戻れる」と目を赤くした。

 弁護団で主任を務める井戸謙一弁護士は「非常に論理的かつ緻密に考え抜かれた決定だ。高裁の裁判官に敬意を表したい」と評価。「再審公判で正々堂々と対峙(たいじ)していただきたい」と述べた。

 

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