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【社会】

柏崎刈羽原発「適合」 規制委、福島同型で初

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 原子力規制委員会は二十七日午前の定例会合で、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が原発の新規制基準に「適合」しているとした審査書案を正式決定した。福島第一原発事故を起こした東電の原発としても、福島第一と同じ沸騰水型の原発としても初の新基準適合となったが、新潟県などが同意する見通しはなく、再稼働できる状況にない。

 この日の会合では、十月五日から一カ月間実施した審査書案への意見募集(パブリックコメント)に寄せられた八百七十件の意見を受けて、更田(ふけた)豊志委員長と委員四人が修正する必要の有無を議論した。その結果、若干の字句修正をし、規制委の正式な審査書とすることで一致した。

 審査書は、海抜十五メートルの防潮堤の整備や、重大事故時に原子炉格納容器内の蒸気を抜くフィルター付きベント(排気)設備を設置するなどの対策により、福島のような事故は防げるとした。寄せられた意見には、事故当事者である東電に、原発を運転する資格がないとする意見が多かった。しかし規制委は、東電経営陣が「福島事故の収束をやり遂げ、柏崎刈羽を安全第一で運営する」と口頭や文書で約束したことや、経済産業相から「(東電が約束を守るよう)適切に監督・指導」すると回答を得たことを理由に、「資格あり」の判断を変えなかった。

 ただし、再稼働に必要な新潟県や柏崎市、刈羽村の同意が得られる見通しは当面ない。特に新潟県は、福島第一事故の原因究明や、柏崎刈羽で事故が起きた場合の住民避難や健康影響に関する独自の検証委員会をつくり、検証を進めている。米山隆一知事は「検証にはあと二、三年かかる」と明言し、それまで再稼働について議論しない方針。

 東電は、県と立地自治体だけでなく、三十キロ圏にある全九市町村の理解が再稼働に必要だと表明している。だが、本紙の取材にどの自治体も、県の検証を見守る考えだと回答した。

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<柏崎刈羽原発> 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがって立地する。福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉。計7基あり、総出力821万2000キロワットは世界最大規模で、東京電力は6、7号機の再稼働を経営再建の柱とする。原子力規制委員会は当初、2基の審査を後に続く沸騰水型のモデルケースとするため優先的に実施。2016〜17年に地盤の液状化で防潮堤が損傷する恐れなどの問題が発覚し審査は一時停滞したが、その後ほぼ終了。原発事故を起こした東電に事業者としての適格性を認めるかが焦点となった。

◆東電は責任果たし終えず 原発を動かす資格に疑問

<解説> 原発再稼働には、新規制基準への適合と地元同意という二枚の切符が必要だ。原子力規制委員会が、うち一枚を東京電力に与えた。

 電力業界に言いなりの「とりこ」と指摘されたかつての審査に比べれば、規制委の審査は確かに厳しくなった。ただし、規制委自らが認める通り、新基準は必要最低限の対策を求めたにすぎない。審査は「新基準を守れば、事故は一定程度以上には拡大しない」ことを前提にしているが、その通りになる保証はない。

 柏崎刈羽原発が他の原発と根本的に異なるのは、運営するのが、重大事故を抱える東電という点だ。

 福島第一の事故収束は途中で、周辺地域の汚染は広域に残り、住民の苦悩が続いている。いまだ責任を果たし終わっていない事業者に、原発を動かす資格があるのか。

 いくら日本最大の電力会社とはいえ、二つの事故に同時対応できる要員はおらず、損害賠償への備えもほとんどない。規制委は東電の資金力も審査したが、新基準をクリアするための工事費を用意できるかチェックしたにすぎない。

 柏崎刈羽が立地する新潟県は、福島事故の検証が終わらない限り再稼働の議論をしないと明言している。あと数年は、もう一枚の切符はそろいそうもない。そんな中で、なぜ規制委が柏崎刈羽の審査を優先して進めたのか理解に苦しむ。 (山川剛史)

 

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