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【社会】

オウム事件の特殊性指摘 最高裁、裁判員判決を否定

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 オウム真理教による一九九五年の東京都庁小包爆弾事件で、殺人未遂ほう助罪に問われ、二審で逆転無罪となった元信者菊地直子被告(46)の全面無罪が確定することになった。最高裁第一小法廷(池上政幸裁判長)は決定で、カルト集団が起こした事件という特殊な背景から、審理はより慎重に行われるべきだったと指摘。事件から十九年たって公判が始まったことで、関係者の記憶が薄らぎ、事実認定は困難だった。(岡本太)

 爆弾で指を失った被害者の元都職員内海正彰さん(66)は「長い年月が立証を阻んだと感じています。事件が風化していくことが残念です」とコメントを発表した。

 公判では、爆弾の原料となった薬品を運んだ菊地元信者に、犯行を手助けする認識があったかどうかが争点だった。

 第一小法廷は「元信者の認識は『何らかの危険な化合物が製造される』というあいまいな内容にとどまる。有罪とした一審判決には飛躍がある」と指摘。逆転無罪とした二審東京高裁判決の結論を維持した。

 裁判員裁判の一審判決について、第一小法廷は「合理性に看過できない問題がある」と批判。オウム真理教というカルト集団が起こした特殊な事件で、慎重な事実認定の積み重ねが必要だったにもかかわらず、プロの裁判官が裁判員に、判断の道筋を示せなかった点を問題視したといえる。

 教団の事件を長年取材してきたフリージャーナリストの江川紹子さんは「一般の感覚にはオウムだったらやりかねないとの先入観がある。裁判員が判断を誤らないよう、裁判官がしっかり説明したのか疑問だ」と指摘。信者に対するマインドコントロールなど、教団の特異な実態を理解した上で、結論を出すことが必要だったとの見方も示した。

 決定は二十五日付で、五人の裁判官全員一致の意見。

 教団による一連の事件では麻原彰晃(しょうこう)死刑囚(62)=本名松本智津夫(ちづお)=ら十三人の死刑が確定。起訴された百九十二人のうち、全面無罪は二人目となった。元信者の無罪が確定すると、残る刑事裁判は、地下鉄サリン事件などで起訴され、一、二審で無期懲役判決を受けた高橋克也被告(59)=上告中=のみとなる。

◆自分の行為で被害重く受け止めていく 菊地元信者謝罪の言葉

 「無罪が確定することは素直にありがたい。とはいえ、自分の行為が何の落ち度も責任もない方に重篤な被害を与えてしまったことを、これからの人生において重く受け止めていく」

 菊地直子元信者は二十七日夜、最高裁の決定を受けてコメントを発表した。

 高校三年だった一九八九年、教団の本を読んだことがきっかけで入信。教団の「厚生省」で幹部の化学実験を手伝うようになり、都庁の事件では薬品の運搬役を務めた。

 事件後に逃走。埼玉県所沢市や名古屋市などを約十七年にわたって転々としたが、二〇一二年六月、相模原市内で身柄を確保された。一四年五月に始まった裁判では、麻原死刑囚への帰依を否定した。

 逆転無罪を言い渡した一五年十一月の二審東京高裁判決では、裁判長が「法律的には無罪だが、あなたが運んだ薬品で重大な犯罪が行われ、指を失った被害者が出た。あなたの行為が犯罪を生んだことを心の中で整理してほしい」と説諭されると、「はい」と小さな声で応じた。

 元信者は、この日のコメントを「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉で締めた。

 

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