東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

EV・ドローン…移動しながら 電波でワイヤレス給電

遠隔給電を可能とする新開発パワー半導体(左)と、使われている窒化ガリウム結晶を見つめる天野浩・名古屋大教授=名古屋市の名古屋大で

写真

 二〇一四年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大の天野浩教授(57)らの研究チームが、離れた場所から電波を使って電気を送る「遠隔給電システム」の開発を進めている。実用化されれば、走りながら電気自動車(EV)に充電できたり、大気の影響を受けない宇宙空間で高い効率で太陽光発電した電気を地上に送ったりと、社会全体に影響が及ぶ。天野教授は「まずは三年後までに、(小型無人機)ドローンにワイヤレスで給電できるシステムを実現させたい」と具体的な見通しを明らかにした。(坪井千隼)

 現在、電気製品を継続して使用するためには原則として電線やケーブルを接続し、送電しなければならない。接続不要の「ワイヤレス給電」も一部で実用化されているが、効率が悪く、携帯電話など微電力で動く製品に限られている。

写真

 チームが開発を目指すシステムは、電気を高周波帯の電波に変換して、アンテナを使って「レーザー光線」のように送り、受信アンテナを通じて再び電気に戻す仕組みだ。原理的には、高出力の電気を遠くまで効率よく送ることができるが、給電時の電力ロスが大きく、実用化は困難だった。

 天野教授らのチームはノーベル賞を受賞した青色発光ダイオード(LED)開発の鍵となった窒化ガリウム(GaN)の結晶化技術を活用。高品質のGaNの結晶を使って、電圧や電流を調整する電子部品「パワー半導体」を高性能化することに成功した。世界に先駈けて新型のパワー半導体を実現したことにより、電力ロスなどの課題克服にめどが立った。手始めとして既にドローン向けのシステム開発に着手。国内の電機メーカーやドローン開発メーカーと協力し、電気回路やアンテナなどを組み込んだシステム開発を進めている。まずは三年後までに数十センチの近距離だが、三分間でワイヤレス充電できるシステムの確立を目指す。五年以内には、百メートル前後の高さを飛びながら遠隔給電できるまで発展させたいという。

 天野教授は「遠隔給電は、物流や人々の移動手段に革命を起こす。みなさんの生活を豊かにできる」と意気込んでいる。

◆将来は宇宙太陽光発電も

 天野教授らが開発する遠隔給電システムが実用化されれば、社会に大きなインパクトを与える。

 地形に関係なく飛べるドローンは、災害救助や次世代物流の担い手として注目を浴びているが、航続時間が短く、ひんぱんに充電する必要がある。標準的なドローンで二十キロの荷物を運ぶ場合、三十分前後しか運転できない。飛行中の充電が可能になれば、航続時間は「無限」といっていい水準になる。

 一般の関心を集めそうなのが、世界中のメーカーが高性能化を競っているEVへの応用だ。充電時間の長さがEV普及の障害となっているが、遠隔給電システムを道路や交差点に埋め込めば専用スタンドに立ち寄ることなく、走りながら充電することも可能となる。

 天野教授らが目指すシステムは離島などへ電波で送電したり、洋上風力発電の電気を都市部などへ効率よく送ったりすることもできる。

 将来的には宇宙空間に太陽光パネルを浮かべ、地上に電気を送る「宇宙太陽光発電」の具体化につながる可能性もある。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報