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【社会】

漫画「君たちはどう生きるか」100万部 名著ブーム学校も

東京都内の書店に並べられた「漫画君たちはどう生きるか」

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 児童文学者吉野源三郎原作の「漫画 君たちはどう生きるか」(羽賀翔一漫画)の累計発行部数が百万部に到達したと、版元のマガジンハウスが五日発表した。発売から四カ月余りでの大台。同時発売の小説の新装版と合わせた発行部数は計百三十万部となった。

 原作は一九三七年刊行。人としての倫理を説く、決して娯楽作品とはいえない本作が受ける背景には、子どもたちを導く教師らからの熱烈な歓迎があった。

 ■配布

 「学校職員です。四冊購入して学級文庫に置きました」「子どもたちにも読んでもらいたく授業でも紹介しました」…。マガジンハウスには「教師」「講師」らからの読者はがきが次々と届く。初めは六十代以上の男性が多かったが、最近は女性からのものが多く、世代も幅広い。

 物語は中学生の「コペル君」と、「叔父さん」の交流を描く。コペル君は友達を裏切ってしまった出来事などを通じ「自分で自分を決定する力」を発見していく。

 学校で漫画版や新装版を一括購入し、生徒らに配る動きも増えている。関西大中等部は新入生に、埼玉工業大は卒業生に寄贈。そんな中、宮崎駿監督が製作中の長編アニメの題名が「君たちはどう生きるか」と明らかになった。岩波書店は、長く読まれてきた同書の文庫版が夏目漱石の「こころ」など“名作中の名作”に続く歴代七位の発行部数になったと発表。大ブームは続きそうだ。

 ■参考

 福岡県の私立大牟田高の保健室に勤める吉田知世教諭(29)は、テレビ番組の特集で漫画版の存在を知った。「読んでみると、八十年前に出版された内容とは思えないほど、今の子どもたちの悩みとリンクしていると思いました」

 保健室には人間関係に悩む生徒がアドバイスを求めてやって来る。「経験が少ない私には、相談に乗ってあげられないこともある」。そんなとき、本書は「参考書」になるのだという。

 「誰だってコペル君のように、自分のことを小さく感じたり、劣等感を抱いたりすることがありますよね。本を読む習慣がない子には言葉を引用して伝えてあげられる。おかげでいろんな助言ができるようになりました」

 ■紹介

 埼玉県八潮市立潮止中。原田義明校長(58)は昨年十二月下旬、二学期の終業式の式辞で漫画版を紹介した。三年生対象の校長面接で、読んだ生徒が少ないと分かったことも理由だった。

 八十年前に比べ、平和で自由な世の中になった。「しかし、この本は、今も変わらない人間の在り方を描いた重要なもの。子どもの世界には、まだまだ浸透していませんから、大人がその背中を押す必要があります」

 吉野がこの本で伝えたかったことを、式辞では、こう要約した。「大勢に流されず、強いものにひるまず、自分の頭で考える」。校長面接で、全員に聞いた質問がある。「君たちは、どう生きますか」

 <「君たちはどう生きるか」> 原作は、雑誌「世界」初代編集長で、岩波少年文庫の創設にも尽力した故吉野源三郎(1899〜1981年)が1937(昭和12)年に刊行し、岩波文庫版などで読み継がれてきた。主人公は、いじめや貧困など、現代にも通じる人生の課題に直面する中学生の少年。亡き父に代わって「メンター」(助言者)的存在となった叔父と語り合いながら、そうした課題への向き合い方を模索していく姿を描く。

 

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