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【社会】

介護リフトで生活変わった 脳性まひの女性、自宅を公開

天井のレールに下げられた移動用リフトをヘルパーさん(左)に動かしてもらい、室内を移動する松浦明美さん=川崎市多摩区で(川上智世撮影)

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 脳性まひで手足が不自由な川崎市の松浦明美さん(57)が、介護リフトを備え付けた自宅を重度の障害者らに公開し、自らの生活ぶりを紹介する取り組みを始める。リフトは市販されているが、障害者の自宅設置費を補助する自治体の制度などはあまり知られておらず、行動範囲を広げてくれたリフトの魅力を伝えたい考えだ。 (山本哲正)

 先月下旬、川崎市多摩区のアパートの一室。天井からつるされたハンモックのようなリフトに揺られながら、松浦さんは居間の隅にあるパソコンの前に移動した。

 台所やトイレ、浴室など、天井のあちこちにリフトのレールが張り巡らされている。自力で歩けず、普段は床に座って過ごすが、室内を移動したい時はヘルパーの女性にリフトに乗せてもらう。女性がリモコン操作で持ち上げた上で、手を使ってレール伝いに移動させる。女性の「動かすよ」という声に、松浦さんは「はいよ」と答える。息の合ったやりとりは、日に何度も繰り返される。

 一歳で脳性まひと診断され、現在は一人暮らし。布団から起き上がる時など特定の場所で使う固定型リフトを利用していたが、五年ほど前にショートステイで訪れたNPO法人療育ねっとわーく川崎(多摩区)の施設で、より広く動ける天井走行型リフトを体験。「これなら好きな場所に動ける」と実感した。

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 昨年三月、同法人が営む今のアパートに引っ越したのを機に、川崎市の補助制度を利用し、自室に天井走行型リフトを設置した。

 「パソコンの前から移動して冷蔵庫を開けて水を飲む。こうしたことでも胸が弾む」。今の生活を満喫している。ヘルパーの負担も軽減され、「ちょっとした移動も頼みやすい」。その魅力を身障者や家族らに知ってもらいたいと、自らの半生をつづった本を出版し、ブログも始めた。

 同法人の谷みどり代表は、障害者のリフトの利用について「同居する家族が機器の力を借りることに『人間的でない』と偏見を抱くケースもある」と明かす。「障害者は入所施設や家族の支援でしか生きられないと思いがちな人たちもいるが、リフトの導入で気兼ねなく生きる生き方を選べる時代。松浦さんを見てもらえば分かると思う」

 松浦さん方の見学は予約が必要。問い合わせは、谷代表=電080(5433)1620=へ。

◆設置費の補助 周知不足

 介護リフトは重度の障害者や高齢者に使われている。メーカーなどでつくるJASPA介護リフト普及協会(東京都港区)によると、天井走行型の価格はレールも合わせて八十万〜百数十万円。

 障害者の自宅設置費の補助制度は、東京都世田谷区、足立区や川崎市などに設けられている=表。二〇一六年度は世田谷区で十一件、足立区で五件の利用があったほか、川崎市ではリフト以外のホームエレベーターなども含め、設置・修理に八十二件の利用があった。だが、日本脳性マヒ者協会全国青い芝の会(事務局・山口県周南市)の福永年久会長は「補助制度を知らずにいる当事者がいる」と語る。

 川崎市の担当者は、障害者手帳の交付時に暮らしに役立つ各種制度を知らせているが、川崎市身体障害者協会の中込義昌理事長は「制度が充実する以前に手帳を交付された人には情報が伝わっていない可能性がある」と話す。高齢者は介護保険を使って固定型リフトを借りられる仕組みになっており、利用実績はあるという。

 

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