東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

<「新東海道」の夢>(上)品川新駅街が産声

浅野内匠頭の墓前で勝ちどきを上げる赤穂浪士に仮装した小野寺さん(中)ら=昨年12月14日、東京都港区高輪の泉岳寺で

写真

 東京五輪・パラリンピックが開かれる二〇二〇年、JR山手線では四十九年ぶりとなる新駅(東京都港区)が、田町−品川間に開業する。新駅や周辺エリアには東京ドーム三・四個分の「新しいまち」が誕生。東西に分断されていた地域がつながり、陸から海へ、人の流れが新たに生まれる。かつて東海道から江戸に入る玄関口として栄えた一帯。近未来のまちに変わっていく姿を間近で見つめる人々の夢を追う。 (松村裕子)

 「エイ、エイ、オー」。大石内蔵助(くらのすけ)役の小野寺紘毅(こうき)さん(73)ら四十七士が刀ややりを突き上げ、勝ちどきを上げた。

 赤穂浪士討ち入りの日に当たる昨年十二月十四日、港区高輪の泉岳寺で行われた義士祭。浪士の墓がある境内を埋めた参拝者らは、元禄時代さながらの四十七士の行列に興奮した。

 新駅は泉岳寺の最寄り駅の一つになる。小野寺さんは、寺や赤穂浪士への注目度が高まれば、義士行列の希望者も増えると予測。「もう一組、四十七士をつくることも考えないと」と笑顔で話した。

 近年、外国人観光客が目に見えて増えた。浪士の墓を訪れたイタリア人ジャンルカさん(41)は、四十七士のハリウッド映画を見たといい、「四十七士の忠誠心に共感する」と話す。

 最近は日本人でも「忠臣蔵」を知らない若者が増えており、寺の担当者の牟田賢明(むたけんみょう)さん(49)は「新駅の開業で参拝者が増え、外国人も含め多くの人に義士を知ってほしい」と期待する。

     ◆    ◆     

 新しいまちの目玉となるのが、江戸時代に付近を通っていた東海道にちなみ、「新東海道」と名付けた南北の歩道だ。

 まちのコンセプトづくりの中心になった東工大教授の中井検裕(のりひろ)さん(59)は「宿場町では知らない人がやってきて話をし、次の旅へ向かった。国際交流や異業種交流という形で、この伝統を引き継ぐ」と語る。

 新駅を設計した建築家隈研吾(くまけんご)さん(63)は「日本は江戸時代、歩いて交流して独自の文化をつくった。これからは駅を中心に歩く時代」と言う。「歩くことで頭が活性化され、いろんなことを思い付く。新しいライフスタイルを発信する場になってほしい」と望む。

 NTTファイナンスは一昨年、新駅に近い海岸側のオフィスビルに本社を移した。「新しいまちができて景色が変われば社員も気分転換ができ、発想が豊かになる」と総務部門長の川崎雅夫さん(55)。「働き方が変わる時代にマッチした場所」と社内の窓から日に日に姿を現す駅舎を眺めた。

 ビルからは線路の反対側にある高台も見える。区立高輪台小学校の六年生は今冬も泉岳寺で、観光客に忠臣蔵の松の廊下事件を演じて見せた。金井博義君(11)は「歴史があるのは誇らしい。近代的だけど、歴史や伝統も感じられるまちができてほしい」と語る。

 新しいまちの担い手たちが、江戸の伝統を未来へつないでいく。

◆周辺に住宅、ホテルなど7棟

 新駅は山手線としては30番目の駅で、暫定開業は2020年の春。その4年後には、駅周辺に新しいまちがオープンする。

 新しいまちは品川車両基地13ヘクタールを中心に、JR東日本と都市再生機構(UR)が開発。南北に細長いエリアにオフィスやホテル、住宅のビル7棟を建てる。東西や南北方向に歩ける道を造り、広場を設ける。これまで車両基地で分断されていた東西の地域を結び、かつて旅人が集まった品川宿や高輪大木戸のような東海道のにぎわいを再現する。

 新駅は羽田空港につながる都営地下鉄泉岳寺駅ともアクセスがよく、東京の新しい玄関口になりそうだ。開業時は1日平均2万人、まち完成時には13万人の乗車人員が想定される。

 ガラス張りの駅舎は昨年2月に着工し、木と膜で折り紙をイメージした大屋根が姿を見せつつある。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報