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【社会】

幻のチョウ 安定繁殖成功「故郷・小笠原で増やせるかも」 多摩動物公園

多摩動物公園のオガサワラシジミ

写真

 絶滅危惧種のチョウで、小笠原諸島・母島(東京都小笠原村)だけに生息する「オガサワラシジミ」を七世代、一年以上にわたって人工繁殖させることに都立多摩動物公園(日野市)が成功した。従来は二世代、数カ月止まりだった。今年は小笠原諸島が返還されて五十年。かつてのように多数のチョウが島内を舞う日を夢見て、関係者は取り組みを進めている。 (榊原智康)

 羽の表面は鮮やかな青。裏面は神秘的な灰色のグラデーション。多摩動物公園の展示標本を見て「美しいですね」と声を漏らすと、飼育担当の石島明美さん(48)が「でも、実物をお見せすることはできないんです」と残念がった。

 都などによると、母島や父島などに多数生息していたが、一九八〇年代に急減。天敵の外来種トカゲの増殖、幼虫が食べる植物オオバシマムラサキが外来樹に追いやられたことなどが原因とされる。父島では九二年以降未確認で、母島でも生息場所はわずかだ。

 環境省や都などが二〇〇五年に保全連絡会議を発足し、同園で人工繁殖が始まった。卵からふ化し、成虫が卵を産むサイクルは約二カ月。一年間の継続飼育には六回の世代交代が必要になる。雄と雌の生殖器を手作業で接触させたり、小型シジミチョウの繁殖実績がある他園の温室を借りたりしたが、飼育は第二世代止まりだった。

 転機は一六年。ビニールハウスの専用温室を新設し、雌が卵を産み付けるオオバシマムラサキの鉢を棚の上に置いた。元々の生息地である木の上の方にいる雰囲気を出すためだ。

 すると翌年一月、第二世代の十九ペアが初めて交尾。その後も順調に世代交代が進み、十一月には第七世代のふ化に成功した。石島さんは「交尾には程よい広さが必要だった。飛べるようになったらすぐ温室に入れ、環境に慣れさせたのもポイント」と振り返る。

 人工繁殖の助言をしてきた東京大の矢後勝也助教(昆虫学)は「万が一、母島からいなくなっても種の絶滅は免れられる」と意義を強調。島外で育てたチョウは病気を持ち込む恐れなどがあり、島で放すのは難しいが、繁殖方法が確立すれば母島で増やすことも可能で、「父島も環境さえ整えば母島のチョウを移し、元の生息状況に戻せるかもしれない」と話している。

<オガサワラシジミ> シジミチョウ科で、羽を広げた時の大きさは約3センチ。世界自然遺産に登録されている小笠原諸島の固有種。1969年、国の天然記念物に指定された。環境省のレッドデータブックでは「絶滅危惧IA類」に分類され、「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」とされる。生息数は不明で、「幻のチョウ」とも呼ばれる。多摩動物公園では昨年11月9日現在、成虫55匹を飼育。

 

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