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【社会】

<「新東海道」の夢>(中)こぎ出そう 海へ世界へ

運河でカヌーをこぐ港区海洋少年団のメンバーら=2017年12月24日、東京都港区芝浦で

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 「カワウがいる」「魚が見える」。昨年十二月下旬、高層マンションやビルの谷間を流れる港区芝浦の運河で、カヌーに乗った地元の海洋少年団の子どもたちが声を弾ませた。運河に浮くカルガモの休憩所にカワウがとまり、水は澄んでいる。中学二年の小倉優海(ゆみ)さん(13)は「新しいまちにやってくる外国の人たちとも一緒に東京湾にこぎ出せたらいいな」と夢を語る。

 「住んでいるマンションのすぐ下の運河でカヌーに乗れるなんて」。少年団事務局長の高橋順蔵さん(45)は八年前、カヌーのイベントに参加して驚き、感動した。しかし、雨が降った後には、放流される雨水で運河の水は茶色く濁っていた。

 「東京の海を泳げるようにしたい」と、区内の水辺で水質向上の啓発に取り組むNPO法人「海塾(うみじゅく)」に参加した。

 二〇一三年に理事長になり、海洋少年団を発足させた。「海で泳ぎ、カヌーをこぐことで心身を鍛えられる。海辺で育った記憶を持たせたい」と願う。

 新駅ができると水辺に行きやすくなる。「水辺に人が増えれば、水質への関心も高まり、行政ももっと水質浄化に力を入れるはず」と、きれいな水辺で大勢の人が散歩や食事を楽しむまちを想像する。新駅を契機に「触れて遊べるほど水をきれいにし、子どもたちの夢を応援したい」と話す。

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 運河は新駅周辺にできる新しいまちの目と鼻の先を通っている。都内で水上タクシーを運航する「東京ウォータータクシー」社長の田端肇さん(60)は「新駅の近くに桟橋ができるといいね」と期待する。

 二〇年東京五輪の開催決定で起業を決意した。一九六四年の前回五輪で東京の陸上交通は一気に成長したが、長年、港湾物流の仕事に携わった経験から「これからは海上交通も必要」との思いを十年以上前から強めていた。臨海部に競技会場が集まる今回の五輪は「ビッグチャンス」と二年前、運航を始め、これまでに約四千三百人が利用した。

 船体が黄色の同社の水上タクシーは今は二隻だけだが、田端さんは「二〇年には六十隻に増やしたい」と意気込む。羽田空港近くの桟橋に行き来する利用も月に数回ある。新駅ができれば、外国人の増加が十分見込める。「外国人にも水の都・東京を楽しんでほしい」と語る。

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 新駅付近は江戸時代、魚や貝、芝エビ、海藻がとれる豊かな海だった。田町駅近くには、有名な落語「芝浜」の舞台となった雑魚場(ざこば)(魚市場)があった。

 芝落語会は毎年、「芝浜」を上演する。落語を聞くのが好きな人たちが四十余年前に旗揚げし、盛んだった庶民文化を次世代に引き継ごうと、年六回、高輪の区民ホールなどで落語会を開いている。

 会長の西田高光さん(72)は「新しいまちで落語会を開き、海だった歴史を伝えたい。海外から来た人にも日本の芸能文化をアピールしたい」と語った。

 

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