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【社会】

<「新東海道」の夢>(下)新しいまち、託す未来

防犯パトロールの出発前に一ノ戸夕星ちゃん(左から2人目)を囲み笑顔を見せる母京子さん(左)、渡辺正治さん(右)ら=2017年12月25日、東京都港区芝浦で

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 山手線の新駅から数百メートルの場所に、高層マンションが立ち並ぶ東京都港区の芝浦地区。「カーン、カンカン」。昨年末、日の暮れたビル街に拍子木の音が響いた。「わがまちをみんなで守ろう年の暮れ」。住民ボランティアの防犯パトロールだ。

 黄緑色のベストを着けた十数人の大人に交じって歩くのは、大人用のベストがドレスのように見える一ノ戸夕星(いちのへゆうせい)ちゃん(2つ)。「こんばんは」と声を掛けて反応しない通行人も、夕星ちゃんには「かわいい」と手を振る。地域の人気者だ。

 「地域に知り合いが増えて楽しい」。母京子さん(45)は五年ほど前に初めて参加した。京子さんのおなかにいるときから一緒に参加してきた夕星ちゃんも、今ではすっかりメンバーと仲良しで、月二回のパトロールを楽しみにしている。

 「おかえり」。芝浦三・四丁目町会の事務所に戻ってきた夕星ちゃんらを、パトロール隊長の渡辺正治さん(70)が出迎えた。渡辺さんは「新駅の名称を『芝浦』に」と一昨年、区議会に請願した。

 芝浦の工場や倉庫の跡地には、二〇〇七〜〇八年にかけて巨大マンションが次々と建ち、「芝浦アイランド」という新エリアもできた。その前後で町会の人口は三倍の約一万八千人に増加。地元の芝浦小学校の児童も七年で倍の千人となり、新しい学校が計画される。

 「少子化時代に子どもが増えるのはすばらしい」と渡辺さん。新駅周辺に新しいまちができ、さらに子どもが増えるのを歓迎する。「子どもたちにとっては芝浦がふるさと。芝浦駅になれば喜ぶだろう」

 人口急増による治安悪化を懸念してパトロールを始めたのは〇六年。当時、「簡単なボランティア活動は外国人でも子どもでも高齢者でもできる。住民交流にもうってつけ」との思いもあった。住民融和に一役買う夕星ちゃんらを見るにつけ、あらためて実感する。

 「新しいまちは、伝統もしきたりもないから仲間になるのに敷居が低い。ボランティア活動は義務でないから楽しんでできる」。新駅周辺にできる新しいまちも、同じようになればと願う。

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 芝浦地区と線路を挟んで西側にある高輪地域は、古い寺社が残る歴史のまち。地元の三つの商店会は一四年、いち早く「江戸時代から使われている『高輪』を駅名に」と区議会に請願し、採択された。

 「人情味はこれからも人を引きつけるだろう」。創業約百二十年の能登理容室の三代目、能登芳和さん(74)が語る。店には、家庭的な雰囲気にひかれて都外の人や外国人も訪れる。商店会などの役員を歴任し、今も地元神社の総代。一月の神社の祭りから十一月の餅つき、十二月の夜回りに至る地域の年中行事に、五十年以上携わる。

 八月の盆踊りは、やぐらの組み立てや協賛金集めなど準備は大仕事だが、地域外や海外の人も含め二日で延べ千人が参加する。「新しいまちができたら、一緒にいろいろな行事をにぎやかにやりたい」

 新駅を挟んで期待が膨らむ芝浦と高輪。夢見る駅名は違えども、「人の輪が広がれ」との思いは同じだ。

 (この連載は、松村裕子が担当しました)

 

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