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【社会】

浮世絵を触って鑑賞 視覚障害者も楽しめる

中村教授らが制作した「富嶽三十六景」の冊子から。線や点の凹凸で浮世絵を表現している=水戸市の常磐大学で(中西祥子撮影)

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 目が見えない人が芸術作品を楽しむ機会を増やしたい−。浮世絵を触って鑑賞できる冊子を制作した常磐(ときわ)大(水戸市)の中村正之教授(63)らが、次の冊子作りに向けて支援してくれるスポンサーを探している。印刷技術の進歩で大量生産が可能になったが、ハードルは資金難だ。 (中村真暁)

 一作目の冊子は二〇一五年秋、中村教授や学生、卒業生でつくる「TEAM MASA(チーム マサ)」が制作した。江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎が富士山を描いた「富嶽三十六景」の「甲州石班沢(かじかざわ)」をモチーフにした。現在の鰍沢(かじかざわ)(山梨県富士川町)付近から富士を望む作品で、荒波の中で漁師が引く投網と、山の稜線(りょうせん)が呼応するダイナミックな構図だ。

 絵の輪郭や着色部分に凹凸が付けてあり、輪郭や濃淡を触って感じることができる。冊子は八ページ。最初のページに描かれるのは右上部分の富士山だけで、その他は描かれていない。次ページ以降、大きな岩、網を投げる漁師、打ち付ける波が徐々に加わり、最終ページで全体が完成する仕組み。

中村正之・常磐大教授

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 中村教授らは〇六年から、写真や絵画に凹凸を付ける研究を始めた。「情報が多すぎて形が錯綜(さくそう)し、分かりにくい」との声を受け、北斎の多色刷りに倣って、重要度の高いモチーフごとに画像を分割する表現方法を確立。各地で開いた展示会では「あきらめていた絵画鑑賞ができた」と感動する声が寄せられた。

 手作業で用紙を一枚ずつ加熱して加工するため、当初は大量生産は難しかった。しかし、画像を残したままで、その上に凹凸を付ける印刷技術を「欧文印刷」(東京都文京区)が開発。健常者も絵を見ることができ、開発者で執行役員の山崎純さん(62)は「互いを分かり合えるよう、全盲だけでなく、弱視や目が見える人など皆が一緒に使える物が作りたかった」と振り返る。

 中村教授らは甲州石班沢の冊子を同社に委託し、常磐大同窓会の助成金で二百部を作製、特別支援学校などに配布した。現在は三十六景の他作品でも制作準備を進めているが、資金のめどは立っていない。

 スポンサーを探す中村教授は「芸術鑑賞では視覚障害者への支援が手薄だったが、印刷できるようになり世界中で鑑賞できる。全ての人の幸せを支えられれば」と話している。問い合わせは常磐大=電029(232)2511=へ。

 

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