東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

「宿泊の壁」なくそう 東京五輪 バリアフリー化急務

車いす対応の客室のユニットバス内部=東京都新宿区の京王プラザホテルで(淡路久喜撮影)

写真

 2020年東京五輪・パラリンピックの準備が進む中、「日本のホテルはバリアフリー対応の客室が少ない」と、国際パラリンピック委員会(IPC)から懸念の声が出ている。車いす利用者らには特に、客室に多いユニットバスが使いづらいという。国は現在、国内のバリアフリーの客室数を調査中で、客室の設置基準の見直しも始めた。(石井紀代美)

 大会に向け今後、国内外から車いす利用者らの宿泊が増えるとみられる。東京大会の組織委員会パラリンピック統括室長の中南久志さんは大会期間中のバリアフリー客室の需要を「一二年ロンドン大会では、車いす席のチケット数などから一日当たり最大約三千人が会場に足を運んだと推測できる。東京大会でも千室用意できれば、間に合うのではないか」と見通す。

 組織委によると、IPCのハビエル・ゴンザレス最高執行責任者(CEO)は昨年五月、ホテルのバリアフリーについて「われわれの国際基準に合致しない」と、ユニットバスタイプの浴室の改善などを求めた。

 ユニットバスは床下に配管があるため入り口の段差が高く、スロープを設けたとしても、車いすが中で方向転換できる広さもない。IPC側は「浴槽はなくてもいい。車いすに乗ったままアプローチできるシャワーがあれば」と指摘したという。

 浴槽や段差を取り除くには大規模な改修を要する。都内の主要ホテルなどが加盟する日本ホテル協会の担当者は「投資を伴う大改修はハードルが高い。バリアフリー対応の客室は会員ホテルでも各一〜二室しかないのではないか。広めの客室で、できることをやっていくしかない」と話す。

 〇六年施行のバリアフリー法が、バリアフリー客室が増えない一因との指摘もある。同法では一定規模のホテルや旅館の新築・増改築時に、出入り口の幅などの基準を満たした客室の設置を義務付けている。ただ「五十室以上ある宿泊施設で一室以上」との規定で、どんなに大きなホテルでも一室あれば規定は満たす。

 国土交通省の担当者は、バリアフリー客室の基準などについて「見直しの必要性を感じており、改修を下支えする補助制度も検討している。大会には間に合わないかもしれないが、バリアフリー化の機運を高めたい」と語る。

 NPO法人「車椅子社会を考える会」の篠原博美理事長は「車いす利用者も障害の程度によってかなり違う。ホテルスタッフが障害者への理解を深め、それぞれに合った応対をすることも重要だ」と話している。

◆京王プラザ いち早く対応

 都内では、京王プラザホテル(新宿区、1438室)が客室のバリアフリー化にいち早く取り組んできた。

 同ホテルは1981年8月、日米車いすバスケットボール大会で来日した米国のナショナルチーム約20人の宿泊先になった。88年に、段差を解消するなどしたバリアフリー客室を十数室設置。現在は2002年に整備した10室がバリアフリー対応だ。

 室内に段差はほとんどなく、浴室のドアは車いす利用者が開けやすい引き戸。浴室の広さも、車いすに乗ったまま中に入れるほど余裕がある。廊下側から部屋のドアをノックすると室内の照明が点滅し、聴覚障害の宿泊客に来客を知らせる。他にもスタッフと筆談できるタブレットを置くなど、障害に合わせた配慮を心掛けているという。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報