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【社会】

「自治体に警鐘の判決」 逗子ストーカー 市に賠償命令

判決後の記者会見で、三好梨絵さんの遺影を手にする夫=15日、横浜市で

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 二度と起きてほしくない−。神奈川県逗子市のストーカー殺人事件を巡る損害賠償訴訟で、十五日の横浜地裁横須賀支部判決は「命に関わる情報を漏らした」と、市の責任の重さを認めた。遺族は癒えることのない悲しみを抱えながらも、「個人情報の扱い方を考えてもらえる」と判決を前向きにとらえる。一方で、自治体による情報漏えいは後を絶たず、専門家は対策の不十分さを指摘する。(加藤豊大、加藤益丈、福田真悟)

 「命に関わる情報の漏えいが二度と起きないよう、全国の自治体に警鐘を鳴らすことができる判決だ」。元交際相手の男に刺殺された三好梨絵さん=当時(33)=の夫(47)は判決後、横浜市内で記者会見し、こう語った。

 請求額の千百万円に対し、判決が認めた賠償額はわずか百十万円。「完全に納得しているわけではない」というが、「お金が全てではない。市が漏えいしたのはただの個人情報ではなかったと認めてくれた」と一定の評価をした。

 判決をどう報告するかと問われ、言葉を詰まらせる場面も。三好さんは事件前、ストーカー被害者として同様の被害が起きないよう、メディアの取材に応じようとしていたという。「『やるだけのことはやってくれた』と言ってくれるのかな」。夫は涙をぬぐった。

 逗子市の平井竜一市長は市役所で会見し「被害者と遺族におわび申し上げ、ご冥福をお祈りする」と改めて謝罪。「情報漏えいを起こさないよう最大限の取り組みを続けたい」とした。

 裁判の過程では、市の再発防止策が不十分として和解協議が決裂した。市の対応を守秘義務違反などと厳しく断じたこの日の判決に、平井市長は「やれることをすべてやったつもりだが、ご理解いただけなかった。今後も継続的に研修などをし、市民の信頼を得たい」と話した。

◆DV被害者情報続く漏えい

 住民の個人情報をどう守るのか。今回の判決を受け、専門家は自治体がより真剣に対策を考えることを期待し、情報が漏れた場合にも被害を最小限にする仕組みづくりを訴える。

 情報セキュリティ大学院大の湯浅墾道(はるみち)教授(情報法)によると、逗子市の事件後、ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)の被害者の個人情報を特定の職員しか閲覧できなくするなど、管理を厳格化する自治体が増えた。

 それでも二〇一三年十二月には千葉県柏市で、一四年六月には東京都世田谷区で、いずれもDV被害者の個人情報を加害者に開示してしまう事例が起きるなど、漏えいは続いている。湯浅教授は「情報の管理の仕方は自治体によりバラバラ。判決が『情報はより厳格に守る義務がある』とした意義は大きく、対策が加速するだろう」と話す。

 ストーカー被害者らの相談に応じるNPO法人「ヒューマニティ」(東京)では、事件後もストーカー被害の相談が増えているという。小早川明子理事長は背景に自治体の対応の不十分さがあるとして、「相談体制や被害者を保護する仕組みの拡充など、被害を最小限に食い止める取り組みを」と求めた。

 

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