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【社会】

過労自殺認め和解 部下の残業 肩代わり

 ホンダの子会社「ホンダカーズ千葉」(本社・千葉市中央区)の自動車販売店の男性店長=当時(48)=がうつ病になり二〇一六年十二月に自殺したのは、長時間労働などが原因として、遺族が同社に約一億三千五百万円の損害賠償を求めた訴訟は十七日、千葉地裁(小浜浩庸裁判長)で和解が成立した。同社が自殺の原因は過労と認めて謝罪し、解決金を支払う。金額は非公表。

 原告側の代理人弁護士によると、男性は、会社から部下の残業を減らすよう指示され、残業を肩代わりするなどして長時間労働を続けたとされる。千葉労働基準監督署は一七年六月、「十分な休息も取れなかった様子が推認できる」などとして労災認定していた。和解条項では、懲戒解雇の無効と安全配慮義務違反を認めた。

 男性は一五年三月、千葉市に開店した販売店の店長に就任。同年六月に失踪し約二カ月後にうつ病と診断され、無断欠勤を理由に懲戒解雇になった。一六年十二月に自宅で自殺した。開店準備を含む一五年一〜六月の時間外労働は、多い月で八十七時間に上った。

 男性の妻は「二度とこのようなことが起こらないように改善してほしい」とコメントした。同社は「ご本人、ご遺族に精神的苦痛を負わせてしまい、心よりおわび申し上げます」とした。

男性店長の遺影=千葉県内で

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◆働き方改革 管理職板挟み

 「働き方改革」が声高に叫ばれる中、部下の仕事を背負い込んだ管理職の自殺を、会社側が過労死と認めた。男性は店長になり「社長に部下の残業が多いと言われた。仕事量は減らないし、部下を早く帰さないといけない。どうしたらいいか」と悩んでいたという。

 会社から何度も表彰を受けた優秀な社員だった。男性の妻によると、新たな店舗で二〇一五年三月に店長になった後、帰宅が遅くなり、休日も出勤するようになった。その後、帰宅後すぐに自室にこもり、持ち帰った会社の仕事をするようになったという。

 会社の対応はつれなかった。懲戒解雇を不服として男性側が千葉地裁に申し立てた労働審判では、会社側は「(男性は)大した仕事はしていなかった」とした上司の陳述書を提出した。男性は「誰も本当の事を言ってくれない。味方がいない」と妻に漏らした。

 昨年十二月、労災認定を受けたことが報じられると、会社側から和解の申し出があったという。

 過労死問題に詳しい森岡孝二・関西大名誉教授(企業社会論)は「働き方改革の目に見えるスローガンが残業削減だ。人を増やさず、仕事を減らさずに実施すると、中間管理職にしわ寄せが一番いきやすい。会社が労働時間などの実態を把握することが必要だ」と指摘する。

 原告側の代理人の黒葛原(つづらはら)歩弁護士は「部下に『残業減らせ』と言えばなんとかなるという感覚が会社にあると、管理職が過重な仕事を強いられ、悲惨な結果になることを今回の事件は示した」と話した。

 厚労省によると、二〇一六年度に労災認定された過労死や過労自殺(未遂を含む)は計百九十一件。このうち会社や団体の管理職員は十九件に上った。

 男性の妻は「家族を亡くした身としては、働く人たちには、自分で抱えきれない負担までは頑張らないでほしいと思う」と気丈に語った。(黒籔香織)

 

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