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【社会】

「防災の知恵」どう伝える 阪神大震災「語り部」活動

阪神大震災の体験を語る「語り部KOBE1995」の柴田大輔さん(左)=神戸市で

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 大規模な災害で被災した経験を語る「語り部」の活動には、南海トラフ巨大地震など「次の災害」がいつどこで起きても不思議ではないとの考えから、「話を聞いてみたい」との依頼が相次ぐ。一九九五年の震災発生から今年で二十三年となった阪神大震災の被災地、神戸の語り部たちは、活動を次世代につなごうと心を砕く。

 「一月が近づくと骨がむき出しになった弟たちの遺体の記憶がよみがえります」。昨年十一月、神戸市長田区。柴田大輔さん(30)は、防災の意識啓発のため、津市から訪れた自治会メンバーらに語り掛けた。

 柴田さんは小学一年のとき、震災による火事で当時三歳と一歳の弟を失った。母親も重傷を負い約二年入院。語り部の活動では、助け合いの大切さを強調する。所属するのは「語り部KOBE1995」。二〇〇五年に結成され、現在も遺族ら六人が年間二十件ほどの依頼を受ける。

 代表の元小学校教諭田村勝太郎さん(76)によると、震災直後、神戸では仮設住宅の住民らが二十〜三十の小規模の語り部グループをつくり、「語り部KOBE」の前身もそうした団体だった。

 被災から年月が経過し、語り部への要望は「生の体験を聞きたい」から「防災活動について知りたい」へと変わり、戸惑いを感じたメンバーも。曲折を経て現在の団体に衣替えした後は、依頼者のニーズに応じようと、防災がテーマの大学のゼミとの連携を始めた。

 首都直下地震や南海トラフ巨大地震への懸念が広がり、地域の防災活動に生かそうとの依頼は多いが、高齢化は避けられない壁だ。初期メンバーが七十代となり、柴田さんら三十代に加入を呼び掛けた。

 行政や消防OBの立場から経験を語り継いでいるのはNPO法人「神戸の絆2005」。専務理事の金芳外城雄(かねよしときお)さん(75)は、神戸市の幹部として避難所運営に携わった。震災を経験した職員が次々と退職していくことに危機感を覚え、〇五年に立ち上げた。

 現在は防災士や自治会幹部もメンバーに加え、約百五十人が所属。年に四十〜五十件の依頼を受ける。金芳さんは「地域のまとまりがあるところほど避難所運営がうまくいった。地域の協力は不可欠」と話し、知恵の継承を目指す。

 「語り部KOBE」の顧問を務める京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)は「生の体験談は防災に本気で取り組むスイッチ。語り部にとっても、つらい体験を消化し、亡くなった人からもらった宿題を果たす使命感が生きる力になる」と意義を強調する。

 

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